御嶽山噴火 情報共有の重要性を教える

 9月末に御嶽山が噴火し10月1日現在死者は25人に達した。1ヶ月前から考えられていた噴火可能性を、登山客にアラートしなかったことが被害拡大の一因と言われる。企業でも情報共有が徹底されないことで大事故が起こりやすい。コストや手間がかかっても情報共有が如何に大事か、今回の事件は教えてくれる。

事前の噴火サイン 登山者には情報共有せず



 9月27日からはじまった御嶽山(おんたけさん)噴火はいきなり起きたわけではない。事前に様々な兆候が現れていた。
  
 御嶽山で火山性地震が増え始めたのは9月10日からだ。10日と11日の二日間で気象庁は140回以上の地震を観測しており、周辺の地方公共自治体にも山頂付近で火山灰噴出の可能性があると情報提供していた。
 
 しかし気象庁は、決定的な噴火兆候が見られなかったため噴火警戒レベルを平常とし、登山者への立入禁止、警戒呼び掛け等の対応は自治体に依頼しなかった。
 
 日本の登山人口は2013年には800万人に上るという統計もあり※1、御嶽山への登山者も年々増えていた。
 
 起きてしまった出来事に「もし」はないが、9月10日に戻れるなら、気象庁の関係者は間違えなく登山者に事実を通知し、御嶽山を登らせなかっただろう。

トップが率先して情報共有し、問題回避せよ



 御嶽山噴火に関する気象庁(気象情報を司るトップ)の情報共有不徹底がもたらした被害は、経営者に多くの教訓を与える。
 
 ある調べによると、「経営者との情報共有・コミュニケーション」が不足していると問題を提示する社員は、解答の63.8%に登った。※2
 
 「経営陣やマネージャーが何を考えているのか?方針が見えない。」という社員の話をあなたも聞いたことがあるだろうか?
 
 ケースによってはあなたの情報共有不足が会社の業績を悪化させたり、鈍化させている可能性もある。
  
 登山可否に関する方針を情報共有できていれば、御嶽山の事故被害が最小限に食い止められたように、経営者も従業員と大小の問題に関わらず、事業に関する方針を情報共有すれば、会社に起こり得る事故を未然に防ぎやすくなる。

共有する姿勢 ツール選びよりも大事



 インターネットモール国内最大手の「楽天」は、1万人以上の社員を抱える国内有数の大企業であるが、代表の三木谷浩史氏は、毎週月曜日朝8時から始まる全社員が集う朝礼を重視している。 各部署の状況を把握したうえで、モニターを通じて全社員へ社内の問題点や企業としての方向性をしっかりと伝えるのだ。
 
 全ての企業が楽天のように全員での朝礼を行えるわけではないが、大事なのは経営者自身が会社の方針や問題点を共有する姿勢を全社員に見せることである。
 
 御嶽山噴火被害の一因がトップの情報共有不足であったことは、経営者にとって大きな教訓を与える。
 
※1総務省統計「登山人口の推移とその構成について」
http://soukaken.com/soukaken/soukaken_tokei_tozanjinko.pdf
※2NTTレゾナント/三菱総合研究所「企業内コミュニケーションに関する実態」
http://www.mri.co.jp/NEWS/magazine/club/03/__icsFiles/afieldfile/2008/10/20/20061201_club07.pdf

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