SlackvsChatWork:貴方に最適なビジネスチャットはどちらか

 ビジネス上のコミュニケーションツールがメールからチャットに急速にシフトしていますが、ビジネスチャットツールとして大きなシェアを占める2つのサービスが、”Slack”と”ChatWork”です。2大ツールの強みを機能面から解説し、最終的にはそれぞれどういう使い方に向いているかをショーンが説明してくれます。

ビジネスチャットツールは2大ツールが隆盛


 前回の記事「チャットツールがビジネスを加速させる」で、ビジネス上のコミュニケーションツールがメールからチャットに急速にシフトしているということを書きました。

 その流れの中で、ビジネスチャットツールとして大きなシェアを占める2つのサービスが、”Slack”と”ChatWork”です。

 どちらがいいか、という感じの記事をたまに見かけますが、それぞれ制作者側の意図や想定している用途が異なっているため、どちらがいいかはビジネスの形態や使う人たちによって変わってきます。

 今回はこの、ビジネスチャット2大ツールの強みを機能面から解説し、最終的にはそれぞれどういう使い方に向いているかを説明したいと思います。

エンジニア視点のコミュニケーションツール”Slack”が持つ3つの強み


 2013年8月ローンチのサンフランシスコ発のサービスです。

 もともとはゲームを開発していたチームで、コミュニケーションを取るためのツールとして開発されたものです。

 その時開発されていたゲーム自体は鳴かず飛ばずだったらしいのですが、Slackの他社提供を開始すると、瞬く間に大ヒット。

 もともとの開発経緯からも分かるように、エンジニアの人たちがコミュニケーションすることを主軸においており、そのユーザーはエンジニアに多く、日本でもベンチャー企業を中心にエンジニアがいる企業では、ほぼSlackが導入されています。

 非常にシンプルなUIでありながら、ビジネス上のコミュニケーションに必要な機能はそろっており、また絵文字やマークダウン記法、キーボードショートカットなどエンジニアが喜ぶ機能が満載です。

 有償ユーザー数は世界で80万を超え、現時点でのビジネスチャットのチャンピオンです。そのSlackの強みは以下の3つです。

(1)マークダウン



 エンジニアでない人にはあまり馴染みがない言葉かもしれませんが、Slackを使っている人たちはマークダウンを頻繁に用いています。

 マークダウンとは、プログラミングほど複雑ではないけれど、特定の記述の仕方をすることで文字を装飾したりする方法のことです。

 「>」を頭につけるとインデント表記になる、「*」で囲むとボールド(太字)になるなどです。

 もっと詳しく知りたい人はこちらを見てみてください。

 WORDなどの文書ソフトでは、文字の装飾は特定のボタンを押したり、キーボードショートカットを使うことで行います。

 対して、マークダウンではプレーンテキスト上に装飾させるための記号を記載することで、それらを実現します。

 HTML上での記載方法と発想は同じです。

 最初は戸惑うかもしれませんが、覚えてしまえばすごく使いやすい記載方法です。エンジニアの人には特に違和感なく使えることが人気の要因のようです。

(2)サムネイル表示



 Facebookの投稿などでも採用しているURLなどを貼ると、そのサムネイルを表示してくれる機能がSlackにはあります。

 URLをクリックしなくてもリンク先に何があるのかが分かる、という程度の機能ですが、スピードを重視するチャットでのコミュニケーションでは、とても重要です。

(3)高いカスタマイズ性



 多くのユーザーがエンジニアということで、Slackは非常に高いカスタマイズ性を持っています。

 最近流行りのボットも作ることもできますし、外部のサービスとも簡単に連携することができます。

 例えば、
  • 問い合わせがあった場合に自動的にSlack上に投稿する
  • 勤怠ツールと連携して打刻漏れがある人や残業が多い人に警告を出す
 ということが割と簡単にできます。

 簡単にと言いつつも、ある程度のプログラミングの知識がないと難しいので、そういう意味でもエンジニア向けのツールであると言えるでしょう。

 社内にSlackをカスタマイズできるエンジニアがいれば、どんどんカスタマイズして便利にできるのが、Slackの最大の強みと言えます。

多機能で現場視点のコミュニケーションツール”ChatWork”が持つ3つの強み



 2011年3月にリリースされた日本発のサービスです。

 ビジネスを加速させ成長させるために、メール・電話・会議に代わるツールが必要だ、というコンセプトで開発されたものです。

 日本企業はいまだにメール・電話・会議がメインでビジネスを進めているところが多いですが、IT系企業を中心に日本国内でも導入社数は着実に増えています。

 ワークスタイルの変革を意図して開発されたツールであるため、ただのチャットに留まらない多機能なビジネスチャットツールであり、世界180カ国、約60,000社で導入されています。

 エンジニアではない人たちでも馴染みやすいUIや機能が多く、また日本人が開発したツールならではの、細かい機能が満載なChatWorkの強みは以下の3つです。

(1)返信機能



 メールの返信と同様に、元の投稿に対して返信をすることができます。

 私の周辺でSlackを頑なに使わない人たちが、「ChatWorkを使う理由」で必ず上がってくるのこの機能です。

 メールの代替手段として非常に馴染みやすいこと、また誰のどの投稿に対しての返答が明確になる、などのメリットがあります。

 チャットツールは投稿が容易である分、盛り上がってくるとものすごい早さで会話が流れていきますので、誰の何に対しての投稿なのか明確になることは非常に重要です。

 また、これも手間というかスピードの問題なのですが、返信すると「to:●●さん」が自動的に組み込まれるので投稿時に選択する必要がないという点もビジネスマンに受けているようです。

Slackももうすぐこの機能をリリースするという噂がありますが、現時点はChatWorkの強みの1つでしょう。

(2)タスク機能



 ChatWorkの大きな強みの1つとしてよく上げられるのが、タスク機能です。

 自分だけでなく、他のメンバーに対してタスクを設定することができます。

 チャットというのはどうしても投稿が流れてしまいやすい傾向があり、チャット上で「●●をやっておいて欲しい」という投稿をしたとしても相手がそれを管理しているかどうかは不明です。

 また瞬発的なコミュニケーションの場合は、依頼した本人がそのことを忘れているということも頻繁におきます。

 そこで使うのがこのタスク機能です。

 タスクとして投稿することでタイムラインはどんどん流れていったとしても、タスクとして期日や内容がストックされているので、後から確認することができますし、完了していないタスクも明確になります。

 ただ、本格的なタスク管理ツールと比較するとリマインドや一覧性が弱く、あくまでもちょっとした備忘録程度という感じです。

 タスクを完了したとしても、完了ボタンを押してくれなかったりするメンバーが増えると、完全に機能不全に陥るので、使いどころはきちんと見極める必要があります。

 とはいえ、誰かに何かをお願いする投稿をするときには、タスクとして投稿しておくと、期日を含めてその内容が明確になりますし、完了の有無も確認しやすいので、ビジネスコミュニケーション上は便利な機能だと言えるでしょう。

(3)社外ユーザーの連携



 ChatWorkは社内外のユーザーをあまり意識せずに繋がり、やりとりをすることが可能です。

 頻繁にやり取りをする場合は、メールよりもチャットによるコミュニケーションの方が圧倒的に早くなりますし、複数の関係者がいるプロジェクトなどの場合は、社内外関係なくグループを組んでやり取りをすることになります。

 これができることにより、メールの代替手段としての立ち位置がより明確になっていると言えます。

 一方で、Slackはあくまでもチーム内でのコミュニケーションを前提に設計されており、チームの管理者から招待をしてもらわないとそのチームに参加できません。

 招待できるユーザーは社内外関係ありませんが、ユーザーIDさえわかれば自由にコンタクトが取れるChatWorkとの大きな違いの1つです。

メールと同様の感覚で使えるという点では、ChatWorkに軍配が上がると言えるでしょう。

どちらを選ぶかは利用状況によって全く異なる


 それぞれの強みを3つずつ上げてみましたが、どちらを導入するかは導入企業の状況によって代わってきます。

 ある程度のエンジニアがいる企業の場合は、カスタマイズ性なども考えてSlackをオススメしますし、営業やマーケティング中心の企業の場合はChatWorkの方がいいと言えるでしょう。

 とはいえ、最終的には利用する人たちの好みによるところが大きいので、どちらか迷った場合には、どちらも無料である程度使えます。

 まずは無料版で2つとも導入してみて、実際に使ってから比較してみるといいと思います。

 私は色々な方とやり取りをするので、2つとも使っていますが、それぞれに良い点があって甲乙付けがたいというのが正直なところです。

 結局は「誰」と「どんなコミュニケーションをとるか」次第で使い分けるという感じでしょうか。

 1つだけハッキリしているのは、メールからビジネスチャットへのシフトが、今後ますます加速していくだろうということです。

 私自身、メールで仕事のやり取りをすることはほとんどなくなりました。

 長らく使っているからという理由だけでメールにこだわっていると、世の中のスピードについて行けなくなることは間違いありません。

 まずはこれらのチャットツールを無料版で使うところから始めてみましょう。(執筆者:ショーン)

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