ナポレオンの3時間睡眠は真っ赤なウソ?⇒本当は◯時間スヤスヤ眠ってた!

 未だに「寝ないで働く人は偉い」という価値観を持つ人が多い要因の一つとして、フランス皇帝ナポレオンは3時間しか睡眠を摂らなくても偉業を成し遂げたという訓話が存在します。しかし、ナポレオンの個人秘書ブーリエンヌが晩年に綴った回顧録には、風説とは全く違うナポレオンの睡眠実態が書かれています。詳細を解説いたします。

「寝ないで働く人は偉い」という価値観を支えたナポレオンの「3時間睡眠」訓話


 年末年始の日経スタイルで、ハフィントンポスト創設者のアリアナ・ハフィントンが書いた、「短時間睡眠は時代遅れ 名だたるCEOが8時間宣言」という記事が話題を読んだ。

 記事によると、アマゾンCEOのジェフ・ペゾスは1日8時間の睡眠を取り、グーグル会長のエリック・シュミットは毎日8時間半の睡眠を摂るという。

 確かに、21世紀に入り仕事に求められる価値観は、働く「時間」の長さから、限られた時間で如何に「生産性と質」の高い業務を行えるか、ということに移行しつつあるため、質の高い仕事とトレード関係にある質の高い睡眠時間を持つことが重要なのは明白だ。

 さて、「偉業を成し遂げたくば、寝る時間を削ってでも、高名な志を持ち任務にあたることが重要だ」という価値観が浸透する上で、世界中のビジネスマンがこの200年間叩き込まれた訓話がある。

 それは、「ナポレオンの3時間睡眠」訓話である。

 ナポレオン・ボナパルトが、軍人となってわずか20年でフランスの皇帝となったうえに、ヨーロッパに広大な帝国を築いた理由は、睡眠時間を削ってでも、意欲的な姿勢で国政にあたったからだと。

 多くのビジネスマンは、このように教え込まれてきたはずである。

 しかし、実のところ、この話は真っ赤なウソだということがわかっている。

ナポレオンはしっかりと7時間睡眠していた


 有能な外交官にして、ナポレオンの個人秘書として11年間寝食をともにしていた、ルイ・アントワーヌ・フォヴレ・ド・ブーリエンヌという人物がいる。

 彼は、ナポレオンと共に過ごした日々を晩年に、『奈翁実伝』という回顧録で残している。

 この本は、日本語でも932ページに及び、ナポレオンの治世に起こった戦争の実態はもちろん、ナポレオンの私生活から嗜好に至るまでを事細かに記した、大変に歴史的価値のある資料である。

 「奈翁実伝」は、ナポレオンの睡眠についても触れているが、その内容を要約すると以下のとおりである。

睡眠は1日7時間。昼寝も日常的な習慣としていた


 ブーリエンヌによると、ナポレオンは養生家であり、私生活における極端を嫌っていたという。

 ナポレオンが生きていた当時から、世の中では「ナポレオンは眠らない。」と言われていたが、ブーリエンヌはこれを「風説」として、バッサリ切っている。

  「ボナパルトは、他人を徹夜させたけれども、自分では寝た。しかも熟睡した。(中略)〜彼は一昼夜のうちに7時間眠って、午後には少時間うたた寝をした」

 これが『奈翁実伝』に綴られている、ナポレオンの睡眠に関する事実だ。※

 ちなみにブーリエンヌによると、ナポレオンは本来だと朝7時起きのはずが、グズって8時まで寝ることもしょっちゅうあったようだ。

プライベート(睡眠)と業務のオンオフがしっかりしていた


 皇帝として激務にあたるナポレオンは、オンオフの切り替えも非常に上手だったようで、ブーリエンヌはこれを賞賛している。

 ナポレオンはブーリエンヌに対して、自分が寝ている間のルールを設けて、それを守るように命令していた。

 その内容は、
  • 1)寝ている間はできるだけ寝室に人を入れないこと
  • 2)寝ている間は良い知らせが入っても起こさないこと
  • 3)ただし悪い知らせが入った時はいかなる場合も起こすこと
 という3つの命令である。

 つまりナポレオンは、物事の優先順位を明確にしたうえで、睡眠時間をきっちり「オフ」の時間として確保していたのだ。

質の高い仕事をしたくば、質の高い十分な睡眠時間をまずは確保せよ!


 200年もの間、睡眠を削ってでも勤勉に働くことを崇拝する価値観の後ろ支えだった、ナポレオンの睡眠に関する実態は、このように全くのウソにより成り立っていたのだ。

 もしも、20世紀の資本主義社会でナポレオンの3時間睡眠が嘘だと明白にわかっていれば、
  • 「偉業を成し遂げたくば、寝る時間を削ってでも高名な志を持ち、任務にあたることが重要だ」
 ではなく、
  • 「偉業を成し遂げたくば、十分に寝る時間を確保し、高名な志を持ち、任務にあたることが重要だ」
 という価値観の元、全く違う歴史が生まれたかもしれない。

 ナポレオンも、現代の成功した経営者達同様、睡眠の大切さを理解し、十分な睡眠をとることにより、生産性の高い業務を可能としていたのだ。

 これらの事実を知った今、私達が全力で為すべきことは、「質の高い十分な睡眠時間をまずは確保すること」である。
 
※『奈翁実伝』191ページ〜192ページより

※画像:ウィキペディア

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