ラグビー日本に学ぶ〜結果を出す人は「テクニック」より「スキル」を磨く

 ビジネスの現場ではよく「スキル」と「テクニック」という言葉が使われますが、2つの言葉は混同されがち。対して、ラグビーでは「スキル」と「テクニック」は明確に区別されています。すなわちテクニックとは「型」スキルとは「実践力」です。この区別を元に、スキルを重視したラグビーを展開した日本代表はWカップで見事躍進しました。適切なテクニックを採用するためには、実践スキルが不可欠なのです。

「スキル」と「テクニック」両者の違いは何?


 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 ビジネスの現場ではよく「スキル」と「テクニック」という言葉が使われますが、皆さんは2つの言葉の違いってわかりますか?

 一般には、「スキル」と「テクニック」はほぼ同じ意味で使われていますね。

 例えば楽器の「演奏スキル」と「演奏テクニック」はどちらも、楽器をどれだけ上手に演奏できるか、という「技術力」のことを意味しており、実質的な違いはないと感じますよね。

 ところが、ラグビーでは「スキル」と「テクニック」は明確に区別されています。

 そして、2015年のラグビーワールドカップで、日本代表が大躍進を遂げたのも、両者の違いを明確にしたことに大きな要因があります。

ラグビー日本代表を勝利に導いた「スキル」と「テクニック」の明確な区別


 では、ラグビーにおいて「スキル」と「テクニック」はどのように区別されているのでしょうか?

 まず「テクニック」から説明すると、「パスを出す」、「パスを取る」、「キックを蹴る」といったラグビーに必要な「動作」のことです。

 こうしたテクニックを磨くためにはひたすら反復練習して体に覚えこませることが必要。すなわち、「型」を身に付けるということです。

 一方、「スキル」は、身に付けた様々なテクニックを実際の試合の中で効果的に用いる能力を意味します。試合は動いています。

 状況が刻一刻と変わる中、その瞬間瞬間で的確な状況判断を行い、テクニックを繰り出す。シンプルにいうと「実践力」と言えるでしょう。

 どんなに、テクニックが優れていても、実践で活かせることができなければ成果につながりません。実は、日本のラグビー選手はテクニックは非常に優れているのですが、実践では使えない、結果的になかなか勝てない、という問題を抱えていたのです。

 日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクター、元早稲田大学ラグビー部監督の中竹竜二氏は、あのエディ・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチも含めて議論し、「スキル」と「テクニック」の違いを明確化しました。

 そして、日本ラグビーのトレーニング内容をテクニックではなく、スキルベースの練習へと重点を移したのです。

 「型」を磨くこと以上に「試合で勝てる」、つまり的確な状況判断に基づいてどんなテクニックを用いるべきかという瞬時の意思決定力を高めることに力を入れたということです。

 そして、スキルベースの練習が、2015年のラグビー日本代表の活躍に大いなる貢献をしたことは間違いないでしょう。

適切なテクニックを採用するには実践スキルが不可欠


 さて、「スキル」と「テクニック」の違いは、ビジネスにおいても明確に意識すべきであると私は思います。

 わかりやすい例を挙げると、パワーポイントで美しいスライドを作成できることは「テクニック」だと言えるでしょう。

 きれいにレイアウトされた図表、バランスのよい色使い、パワーポイントのスライドの作成は、美的センスも必要で、なかなかマネできるものではありません。

 ただ、どんなプレゼンテーションにおいても、美しくデザインされたパワーポイントを作成すればうまくいくと言えるでしょうか?

 人によっては、美しいスライドは中身のなさを見た目でごまかしているだけ、と毛嫌いする人もいるのです。そんな人にとっては、優れたパワーポイント作成テクニックは逆効果、期待する結果につながりません。

 たとえどんなにきれいなスライドを作成できたとしても、もしシンプルな資料を評価する人が相手だったら、そのテクニックは封印し、別の適切なテクニックを駆使する必要があるでしょう。

 テクニック一つひとつが高い水準であるほうが望ましいけれど、大事なのは適切なテクニックの採用、そのための優れた状況判断、意思決定を伴う「スキル」を磨くこと。

 スキルこそが実践で成果を出せる。自分の仕事における「テクニック」とは何か、「スキル」とは何か、を一度しっかり考えてみてはいかがでしょうか?(執筆者:松尾 順)

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