働き方改革って働き方の何をどう改革するの?必要とされる3つの理由

 最近、メディアで「働き方改革」というキーワードを頻繁にみかける機会が増えました。しかし、働き方をどう変えたいのか?働き方をなぜ変えたいのか?ということを聞かれると、案外答えに窮するものです。そこで本稿は、これらの疑問に答えると共に、働き方改革を理解する上で覚えておきたいトレンドキーワードをご紹介します。

安倍内閣が打ち出す働き方改革って一体何だ?


 メディアで「働き方改革」というキーワードを頻繁にみかける機会が増えました。

 しかしながら、働き方改革というボンヤリとした言葉からは、働き方の何をどう改革したいのか?なぜ働き方を改革する必要があるのか?イマイチ理解出来ない方もいるのでは?

 そこで今回は、働き方改革について詳しく解説いたします。

 昨年の9月に第三次安倍内閣は、
  • 希望を生み出す強い経済⇒2020年にGDP600兆円
  • 夢をつむぐ子育て支援⇒出生率1.8
  • 安心につながる社会保障⇒介護離職ゼロ
 というアベノミクス「新三本の矢」を実現させる「一億総活躍社会」プランを会見で発表しました。

 会見では、一億総活躍社会の実現に向けて、安倍首相が多様な働き方が必要との考えを示した中で、長時間労働の是正やフレックスタイム制、非正規雇用者の処遇改善などにも話が及びました。

 更に、働く人の立場に立った改革、意欲がある人にさまざまなチャンスを生む大胆な労働制度の改革を進めること、同一労働同一賃金の実現などに関しても触れました。

 例えば、同一労働同一賃金に関しては、非正規雇用者に関しても勤続による職業能力の向上に応じて正規雇用者と同様に、または相違に応じた昇給を行わなければならない、手当や福利厚生、病気休職に関しても同じような案が出ています。

 参考リンク:同一労働同一賃金ガイドライン案(平成28年12月20日)

 これらを踏まえて端的に言うと、働き方改革は安倍政権による主導の下、一億総活躍社会を実現させるために「労働のあり方」を根本から変える取り組みです。

安倍内閣が働き方改革を進める3つの理由とは


 それでは、働き方改革がなぜ必要なのかについて考えてみましょう。

 安倍政権が働き方改革を進める理由を順番に見ていきましょう。大きく分けて3つあります。

理由1:少子高齢化が進み生産年齢人口が継続して減少している


 まずは、総務省が発表した下のグラフをご覧ください。
節約社長
日本の人口推移:総務省・平成24年版情報通信白書より

 少子高齢化によって、2060年には生産年齢人口は50.9%となり、高齢化率は39.9%になると予測されています。

 不足する労働力を補完するためには、男性をメインとした正社員だけではなく性別や国籍や年齢、働き方の多様性を認めることが効率的です。

 家庭の事情によって離職した人が仕事に復帰しやすいような職場を創ることで、雇用の限界を変えていくことができます。

理由2:長時間労働の是正が可及的速やかに必要


 日本では、これまで当然のように長時間労働が行われてきました。

 少子化による生産年齢人口の減少もあり、限られた人材で仕事をこなすために時間で乗り越えている部分もありました。

 官邸から平成27年6月30日に発表された「日本再興戦略」改訂2015―未来への投資・生産性革命では、一人一人が潜在力を最大限に発揮するためには、長時間労働の是正と働き方改革を進めていくことが重要と述べられています。

 厚生労働省の総実労働時間の推移のグラフをご覧ください。

節約社長
厚生労働省:総実労働時間の推移

 この資料によると、パートタイム労働者を含む総実労働時間は、平均してみると減少傾向にあることが分かります。

 更に、パートタイム労働者の任数が年々増加してきていることも分かります。

 その反面、一般労働者の総実労働時間には大きな変化は見られませんので、正規雇用・非正規雇用を含めた全体での総実労働時間が減少しているように見えるのは、パートタイム労働者の増加が理由と考えることができます。

 また、休日を返上したり長時間労働をしたりという働き方が横行している中、年次有給休暇の取得を奨励する動きも出ています。

節約社長
厚生労働省:総実労働時間の推移

 平成26年(又は平成25会計年度)の1年間に企業が労働者に付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く。)は、労働者1人平均18.4日、そのうち労働者が取得した日数は8.8日で、取得率は47.6%とのことでした。

節約社長
内閣府:資料4

 企業規模の大きい会社(1,000人以上)の方が取得率は高いのですが、それでも52.2%だけです。

 補足すると、海外と比較した時に、日本は年次有給休暇の支給日数に対して、消化日数(取得率)が異常なほど低いことが分かります。

 また、長時間労働者の割合が非常に高いことも分かります。

節約社長
厚生労働省 年次有給休暇より

 厚生労働省の年次有給休暇の資料からは、日本では年次有給休暇を労働者が取得しにくい労働環境があるとも考えられます。

 周りの同僚への迷惑や、休暇取得後に忙しくなる、年次有給休暇を取得しにくい雰囲気など、職場の仲間や雰囲気によって年次有給休暇の取得にためらいを感じる人が多いようです。

 7割近くの労働者が年次有給休暇の取得にためらいを感じているわけですから、取得しやすい状況を作る必要があります。

理由3:人材の多様化・生産性向上など「働き方改革」を受け入れる潮流が生まれている


 ダイバーシティとは、多様な人材を受け入れ、個性を生かして積極的に活用していくことを目指す概念です。

 具体的には、性別や国籍、信条、あるいは宗教など個人の背景や属性にとらわれず、マイノリティと呼ばれる人々にも門戸を広げることで、企業として人材の多様性を認め、結果として優秀な人材を集めることが可能になります。

 日本でも、政府がここ最近ダイバーシティを推奨し始め、企業もこれに取り組むところが増えています。

 多様な働き方を認めることは、労働者のモチベーションを高めることにもつながり、パフォーマンスの向上が狙えます。

 また、成果を労働時間で見るのではなく生産性で見る潮流も生まれています。

 生産性の向上に目を向けることで、質の高い仕事をする人材を獲得することが可能になるからです。

働き方改革について覚えておきたいキーワード


 このように、政府が働き方改革を進める背景には3つの理由があります。

 最後になりますが、働き方改革が進んでいく中で、これからトレンドキーワードとなるものをご紹介しましょう。
  • ワーク・ライフ・バランス:仕事と生活をバランスよく組み立てる生き方
  • VUCA(ブーカ):Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字を合わせた言葉で、企業が予測困難な時代にあることを示す言葉
  • ダイバーシティ:人材の多様化を認める組織風土
  • テレワーク:インターネット等を活用し働く場所に縛られない働き方
  • フレックス:一定のルール内で社員が労働時間を自由に選択できる働き方
  • 在宅勤務:オフィスに出社せず自宅で働く働き方
  • BYOD(Bring your own device、ビーワイオーディ):従業員が個人保有の携帯用機器を職場に持ち込み、それを業務に使用すること
  • BYOA(Bring Your Own Application、ビーワイオーエー):従業員の私用モバイルアプリやクラウドサービスを業務で使用すること
 これらの言葉は、これから働き方改革に対応していく上で、知っておいたほうが良いキーワードです。

 ぜひ、覚えておくと良いでしょう。

 それぞれの言葉の意味は、今後の記事でもご紹介したいと思います。(執筆者:株式会社iCARE)

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