赤字会社VS黒字会社〜従業員の扱いに生じる決定的な差を子育て四訓で説明しよう

 子供の成長に応じて、子供に対する接し方を変えていくことを勧める「子育て四訓」。この話を中小企業に当てはめると、赤字会社は従業員を徹底して小学生扱いして見張り、黒字会社は従業員を大人扱いした上でしっかりと見守ります。両者に生じる決定的な差と、赤字会社がこれを脱却する方法をキミアキ先生が解説してくださいます。

時期別に子育ての作法を教える「子育て四訓」


 子育て四訓と新人教育というテーマでお話したいと思います。

 4月ですからね、入学式のシーズンでございまして幼稚園とか保育園、それから小学校や中学校の入学式では、この子育て四訓のお話が必ず出ると言っても良いような地域もあろうかと思います。

 子育て四訓というのは、まず赤ちゃん 乳児の時から始まりまして、「乳児はしっかり肌を離すな」これが成長するにしたがって、「離すな」が全部「離せ」に変わっていきます。

 乳児の次は幼児ですね。色々しゃべり始める頃です。「幼児は肌を離せ。手を離すな」肌は離すが、手はしっかりと握っていなければいけないと。

 次は少年、小学生ですね。「少年は手を離せ 目を離すな」目を離すな、しっかり見てなさいと。

 今度は中学生ですね。「青年は目を離せ ただし心を離すな」心は離すなよと。

 これが子育て四訓といわれております。

節約社長

赤字社長は従業員を小学生レベルで扱い見張る


 今年、私の上の子が中学に入ったんですけれど、その入学式で子育て四訓を聞きました。

 小学校の入学式でも出てきていましたので、好きな方は好きなんですよね。これ(笑)。

 私、この子育て四訓を聞いていて、ちょっと怖いなと思ったことがあって、実は赤字会社の従業員の扱われ方、それから黒字会社の従業員の扱われ方が、この子育て四訓そのものじゃないかなと思ったんですね。

 赤字会社では従業員が小学生レベルで扱われている。「少年は手を離せ 目を離すな」しっかり見張ってないといけない。

 では、黒字会社の方はどうかというと、「青年は目を離せ ただし心を離すな」心は離してはいけないが、目は離せ、見張る必要はないじゃないかって。

 私が常々思っている赤字会社っていうのは、そこの社長を筆頭に従業員を見張るのが大好きなんです。なぜか(笑)。

 なんで従業員を見張る必要があるのかな?って思うんですよ。だって、今までずっと見張って来たって業績悪かったじゃない!って。

 でも、なぜか見張るんですよね〜。

 社長にも言い分があって、「ウチの従業員は自分が見張ってないとまず時間通りに会社に来ないんだ」「自分が見張っていないとすぐ業務をサボるんだよ」って言うんですよ。

 じゃあ、どうしてそもそもサボったり遅れる人材を会社に入れたの?ってなると、やっぱり結局は、「安い人件費で何とかしよう!」っていう風な考え方が染み付いちゃっているんです。

 安い給料しか支払えないくらいの従業員さんが、会社の利益に対して凄く貢献しているか?貢献してないか?っていう話なんですね。

 これは赤字会社の社長と黒字会社の社長の考え方で明確に違います。

見張られる従業員が利益をもたらすことはない


 黒字会社の社長が従業員さんを雇う時の考え方って、「その従業員さんが利益をもたらしてくれるかどうか」が基準なんです。

 そうやって人を採用していくんです。

 対して、赤字会社の社長っていうのは、基本的には「手が足りないっ手が足りないっ」で、要するにどうしても人が必要!人が必要!作業する人が必要!だから雇う。っていう感じなんですね。

 そういうやり方をしていますから、基本的に「安月給で働いてくれる人がいいよね」「だけど、安月給で働いてくれる人は見張ってなきゃいけないよね」って。

 見張る方からすればコストもかかるし、ストレスになるじゃないですか。

 ですから、私からしてみると、見張らなけばいけない従業員さんを雇ったところで、絶対に利益なんてもたらす訳がないし、そんなやり方をしているからずっと赤字なんでしょっ!ていう話なんですよ。

赤字の中小企業はその殆どがトップダウン構造


 儲かってない中小企業の構造を考えてみると、全体の社員さんとか役員も含めての全体像の中で、 頭を使って仕事をしている人は本当に1割くらいなんですよ。

 社長によっては、「ウチの?!いやいや、1割も頭使ってないよ!」って言う方もいらっしゃると思います。

 「ウチはせいぜい〜……20人いても頭使ってるのは1人いるかな〜」みたいな感じなんですね。

 では、実際に頭を使っていないっていうのは何かというと、要するに作戦も全部決まっていて、仕事が下りてくるだけなんです。

 下りてくる仕事に対して、しっかりとてきぱきとミスなくやってくれれば良いという、これがだいたい普通の会社の構図なんです。

 こういう会社だと、社長の望みとしては、その9割の作業員の人に対して、「自分の目先の、自分の目の前の仕事をどうやって正確に早くこなして行くかを考えてくれれば良いんだよ」というくらいな感じです。

 これが社長の本当の気持ちだと思って良いです。

 ほとんどの会社がトップダウン、上でまず作戦を考えて、それを下に下ろすんですね。だいたいが。

 では、逆に従業員さんの方からボトムアップをしていくって、良い会社だとしても、これは無茶苦茶難しいです。

 無茶苦茶難しい中で、中学生レベルまでの扱いすら受けていないところが、ボトムアップなんて出来る訳がないですね。

従業員を小学生扱いしない採用と教育を行え


 だから、赤字会社が1番最初にやるべきことというのは、従業員さん全員から目を離して、ただし、心を離さないことじゃないんでしょうか。

 要するに見張らないようにするんです。つまり、見張らなくても良いような形で、採用と教育を考えて行かないといけない。

 これを黒字企業社長さんたちは、徹底してやっているんですよね。本当に心血注いでやっています。

 実際に経営革新のときに、現場からまず社長を引き離して、絶対に見張らななくても良いような体制作りをしちゃう、っていうことがあります。

 ですけど、赤字企業の社長さんたちっていうのは本当に見張りたいんですよ。

 見張らないと、従業員が仕事サボるから不安で不安でしょうがないんです。

 ですけれど、本当に万年黒字になっていくときに、「そのやり方も考えた方が良いんじゃないか?全体を底上げして、給料も上げないと!」って、考えるようになるんです。

 そして、最終的には全部数字が変わり、従業員全員と数字で話ができるようになると。

 そこら辺まで持って行かないと万年黒字会社にはなりません。

 いつまで経っても見張っていないといけないじゃあね、「儲かる訳がない!」っていう話です。

 今日は子育て四訓から、小学生レベルではなく、中学生レベルの集団にまず変えて行こう!というお話でした。


 
(執筆者:タナカキミアキ)

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