社風が変われば業績も良くなる〜謎の武器「クレド」を導入しよう

 クレドとは、日本語に訳すと、「信条」「志」「約束」という意味を持った言葉であり、同じ企業で働く人全てが共通して持つことを意識して設定される文化指針を言います。クレドに基づいて行動すると社風が良い方向に変化し、社風が変わると業績がよくなります。リッツカールトンホテルの例を踏まえて、キミアキ先生が解説いたします。

社風が変われば企業は儲かる。クレドを使おう


 今日のテーマは「クレド」ってやつです。皆さんはクレドってご存知ですか?

 我々が事業者の方とお話しても、「クレド」っていうのをまだ半分くらいの方は知らないんですね。

 大前提は、中小零細企業の経営者といえど大企業と同じように、「楽しい環境で従業員さんに働いてもらう義務がある」というもので、特にサービス業ならば楽しい環境づくりというのは本当に大事ですね。

 これを我々はよく「社風」といいますけれども、実際に風通しの良い社風の会社は万年黒字です。

 私自身も社風で経営は殆どが決まってしまう、と考えているところがあります。

 そこで今日は、社風づくりに適したクレドってどういうものなのか?ということについて考えてみたいと思います。

世界で賞賛〜リッツカールトンホテルのクレド


 クレドって何よ?って授業をする時に、必ず出て来る2つの会社があります。

 1つはジョンソン・アンド・ジョンソンで、もう1つはリッツカールトンホテルです。

 私はジョンソン・アンド・ジョンソンの方で習ったのですが、今日はあえてリッツカールトンホテルのクレドを使ってお話していきましょう。

 このクレドというものは何?といいますと、基本的には日本語に訳すと、「信条」「志」「約束」と、大体このような日本語になります。

 まぁ、ここまで読んでも何を言ってるかわからない方のほうが多いでしょうから、実際に読み上げてみましょう。

 そのほうが早いと思いますので。

 リッツカールトンホテルのクレドについて、書き出しの部分をちょっと読んでみたいと思います。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。
 こんな書き出しから始まっています。

 通常業務を離れても良いから解決しても良いんだよ、いや“良いんだよ”どころじゃないですね、「解決しろ」ですからね(笑)。

 いいですか?任されているその通常業務を離れますよね?

 そうすると人がいなくなりますよね…?

 それをみんなでカバーするという文化も、このようなクレドからは成り立つわけです。

お客様のためならクレドに基づく行動は通常業務に対して優先される


 さて、クレドと一緒にリッツカールトンホテルの現場スタッフの予算の話が出てきますけれど、現場スタッフに2,000ドルの決裁権があります。

 日本円で約20万円を、現場スタッフが自由に使えるわけです。

 お客様のために良かれと思う事であれば、まぁ2,000ドル自由に使っても良いよ と。

 これ、毎日バカバカ使っているわけでは無いですよ?

 こういう良い文化の会社では、基本的にしっかりとコスト意識のあるケチケチ経営をやっているんです。

 ただし、どうしてもお客様のためにお金が必要だとなれば、現場スタッフが良かれと思ってやったのならば、バンッと出しても良いわけです。

 通常業務を離れても良いわけです。

 これはリッツカールトンホテルのクレドで、ちゃんとOKとされていて…、いやむしろ「解決しなさい」と命令されているんです。

 「解決しろよコノヤロー!」的なね(笑)。

クレドを作ると上がるもの・下がるものとは?


 もう1つ、日本のリッツカールトンホテルについて出る逸話があります。

 大阪のリッツカールトンホテルに宿泊した東京の大学教授が、その日に東京で使う講演用の原稿とメガネをホテルに忘れたまま、新幹線に乗ってしまったんです。

 その時に、大阪のリッツカールトンホテルのスタッフが、その原稿とメガネを持って、新幹線に乗って追っかけて、東京駅で渡して、教授は事無きを得たと。

 そのサービスに感動した大学教授が自分の大学の講演で、リッツカールトンホテルがこんなに素晴らしい対応をしてくれた!と、言った。らしい!!

 これが逸話として残っていますね。

 「お前見たのかッ」と言われたら、私は見ていません(笑)

 そういう感じで多少おひねりは付いたかもしれませんけれど、やはり現場ではそういう事が度々起こっているであろう、という文化のもとで働いているんですね。

 では、そういう所で働いている人間がどういう風になっていくかというと、通常業務のクオリティは上がるに決まってます。

 常にそういう心がけで働いているわけですからね。

 それから、お客様の満足度も勿論上がります。

 お客様に喜んでいただくことで、自分(社員さん・従業員さん)の満足度も上がるに決まっていますね。

 そしてなおかつ!下がることもあるんです。

 何かというと、広告費が下がりますね。

 やっぱりクチコミ効果がかなり出ますから、変な広告を打たなくてもクチコミでお客様がお客様を連れてくるんです。

 それから、それだけリッツカールトンホテルが素晴らしいホテルだったら、自分たちも泊まりたい!多少高くても関係ねぇや!ってね、そういうお客様って世の中にいっぱい存在するわけですよ。

 だから、お金持ちのお客様だけを相手とするようになると。

 そう考えると、クレドって凄いなと思うわけですよ。

クレドはボトムアップで変え続けることも可能


 ここまで読み進めると、日本企業がよくいう経営理念とクレドって同じじゃない?経営理念でよくない?という方もいらっしゃることでしょう。

 また、経営理念は日本で、クレドが海外なんじゃね?っていう話になるんですけれどね、この判断は難しいんですよ。

 基本的には、経営理念はどちらかというと会社の上層部が考えてトップダウンな形で、みんなもこういう考えでいきましょう というのが強い。

 一方でクレドはどうかな?って考えると、基本的に考え方は全社員で作るボトムアップみたいなところがあって、毎年更新くらいの気持ちで作っていくケースも多いんです。

 ジョンソン・アンド・ジョンソンには、クレドチャレンジミーティングっていうものがあって、「クレドにチャレンジする。挑戦する。毎年変えて行くんだ。」っていう、そういう事もやっているんですね。

 クレドはポケットに入るくらいのサイズで持ち歩くものなんですけれど、まぁひとつの指導者みたいな感じですね。

 我々あおば会計もクレドに近いような事はやっていまして、開業した時に行動指針というものを決めました。

 今でも事務所に貼っているんですが、我々の場合はあえて改定していません。

 それは、やはり指導者みたいなものがあって、開業のときのあの思いを忘れたくないんです。

 開業の時に自分たちの行動指針を作って、本当にお客様の問題を解決していくんだ、それが自分たちの創業の意味なんだ、っていうのを掲げたものなのでね。

 原点回帰みたいなもので、うちは行動指針は変えていませんね。

 こんな感じで、クレドどうしようかな…毎年変えないといけないかな…とかっていうのは、変えるべきときが来たら変えたら良いので。

 そりゃあ、我々も時代にそぐわなくなったら、行動指針を変えていくつもりです。

 ただ、そういう文化を社内に取り入れる。

 大企業がやっていることで中小企業には似合わないって思われるかもしれませんけれど、今は中小零細企業の多くもクレドっぽいことをたくさん導入していますので、社風を変えるときにとても有効ですから、導入してみてはいかがでしょうか。



 
(執筆者:タナカキミアキ)

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