一部の社員について減給処分を下さねばならぬ時に気をつけること

 人事体制の刷新により、これまで役職付きだった社員を降格させることにより、当該社員の給与を減給しなければならない場合があります。使用者の人事権の範囲内で行われる減給は正当なものですが、このような処分を下す際に会社側が制度上気をつけるべき点をご紹介します。

苦渋の決断〜人事降格に伴う一部社員の減給


 経営者や人事担当は、社内の秩序バランスを保つため、一部社員への減給という厳しい処分を時として下さねばならない場合があります。

 たとえば、様々なチャレンジを繰り返して会社が成長すると、既存の社員より優秀な社員がどんどん入社するようになります。

 既存の社員のパフォマンスが、新しく入ってきた社員と比較して甚だしく低いなら、優秀な社員の給与とリバランスを図り、既存の社員の給与を減額せざるを得ないこともあるでしょう。

 これまで課長をやっていた既存社員を課長代理に降格させ、新しく入ってきた優秀な社員を課長とするケースがその一例です。

 もちろん社員にも生活がありますから、課長としての手当がなくなる分、一定期間は調整手当を支給しようとはするかもしれません。

 このように人事体制の変更に伴い、一部社員に減給処分を下さざるを得ない時は、どんなことに気をつけねばならないのでしょうか?

一部社員の減給時に気をつけたいこと/調整手当を与える期間はどれくらいが相場?


 まず、人事体制を変更したり、人事制度を改定する場合に、これらが使用者の人事権の範囲内で行われるものであれば、一部社員の減給は、労働基準法が禁止する労働条件の不利益変更とはみなされません。

 問題とされるケースもそこまで生じないでしょう。

 ただし、労働条件の不利益変更にあたらないとしても、減給せざるを得ない社員から同意書を取っておく必要があります。

 また、先述のような調整手当を支給する際は、「調整手当が◯年で消滅する」といった事項も、しっかりと記載し、当該社員から同意を取り付けておくのが賢明です。

 では、調整手当はどれくらい支給すればよいのか?ということが気になります。

 調整手当の支給期間は法律に定められているものではないため、企業ごとに対応が異なりますが、私どもが支援してきた会社様は、だいたい1年から3年の調整手当支給期間を設けているケースが多いです。

 平均すると2年ほどの期間がアベレージとなっています。

減給額に合わせて調整手当は一定のルール決めが必要


 もう1つ、一部社員について給与を下げる場合に大事なのが、例外を設けずに一律のルール決めを行うことです。

 たとえば、調整手当を支給する際に、「彼は貯金もありそうだから1年でいいだろう」「あいつは厳しそうだから3年分あげないと」というように、個別で調整手当の支給期間を変更することは望ましくありません。

 「調整手当は2万円以上の給与減額の場合は一律2年間、それ以下の場合は一律1年間」という具合に、平等なルール決めを行って社員に処遇を下すべきでしょう。

 年功序列で給与を無条件に上げることが難しい時代になった今、今回あげた問題で悩む企業様はますます増えることが予想されます。

 もし、一部社員の給与を下げねばならぬ場合は、
  • 同意書に押印してもらう
  • 減給額に合わせて調整手当は一定のルールを決める
 ということに気をつけましょう。(執筆者:渡邉 大)

【関連記事】