破れたお札を交換に日銀本店に行ってみた ~主婦の金バナ(6)~

お札が破れた!


私は長財布を使っているのだが、ある日、お札が財布のジッパーに引っかかって、破れてしまった。

あっちゃ~!

でも、端っこが、ちょっと破れている感じで、大がかりな破損ではない。

「混んでいるスーパーのレジで、どさくさに紛れて出してしまおうかしら?」という悪魔の囁きと、「いやいや、ダメでしょ。世の中に、破損紙幣を流すこと自体、お金の仕事をしている人間として、どうなのよ?」と天使のツッコミの葛藤の末、「破損紙幣を交換に行く」という、余計な一仕事を引き受けることにした。(自分が悪いのだが……)


破れたお札は日銀本店で交換してくれる


「破損紙幣」で検索してみると、業務として確実に交換を受け付けてくれるのは日本銀行の本店のようだ。私が検索した範囲の情報では、「普通の銀行や郵便局でも交換はしてくれるが、あくまでサービスの一環」というニュアンス。

小心者なので、銀行の窓口で自分の順番が来て、「え? そんな仕事を私にさせるの?」という顔をした窓口の女性が思い浮かび(妄想です)、それだけで身がすくんだ。

しからば、正々堂々と「破損紙幣を交換して下さい」と言える日銀の本店に交換に行こうではないかっ!

もっとも、そう決めてから、交換に行くまで、相当タイムラグがある。わざわざ交通費を払って交換に行くことはないので、「日本橋に行くついでがあったら」と破れたお札を「破損紙幣」と書いた封筒に入れて、この件は完了。封筒を引き出しに放置したまま、幾歳月が流れていた。ま、主婦の生活というのは、こんなもんだ。


日銀本店は、異空間


さて。いよいよ、日銀本店に行く機会が巡ってきた。

結論から言おう。「日銀本店は、大人の社会科見学として、一回は行ってみても悪くない」。

日銀本店 外観
≪日銀本店が見えてきた≫

重厚な石造り
≪歴史を感じる、重厚な石造りの外観。
威風堂々とした佇まいの日銀本店。恰好いいぞ!≫

ものものしい警備
≪そして、ものものしい警備…≫

さすが、銀行中の銀行! 写真の通り、歴史ある建物、厳重な警備。敷地内に入ると、警備員の人から「何の用事でいらっしゃいましたか?」と聞かれる。銀行の入口のドアを通過する時にも、同じことを聞かれた。「破損紙幣の交換です」というハッキリとした用件がない限り、おいそれとは、中に入れない雰囲気なのだ。

さらに、銀行の中に入って驚いた。

何と!!! 1階の広~いフロアの中で、お客は私、ただ、一人。平日の昼間という時間帯もあったのだろう。

無機質な表情をした、たくさんの銀行員の方々が、カウンター内で黙々と仕事をしているのに、お客さんがいる側はガランとしていて、私だけしかいない。銀行内のレトロな内装も相まって、未来空間、SFの世界に迷い込んだ気がする。この瞬間を体験できただけで、来た価値があると思った

一応、勇気を出して聞いてみた。

私:「あのぉ~。銀行内って、写真撮影OKですか?」

銀行員:「申し訳ありませんが、そういったことはご遠慮頂いております」
「当たり前でしょ! そんなこと聞いた私がアホだ」と、納得できる、ものものしい独特の雰囲気が、あそこには流れている。ゆえに、あの風景を見たければ、自分で足を運ぶしかない。


破損紙幣の交換は無料


紙幣の交換自体は、簡単な必要書類に記入をし、身分証明書を見せ、椅子に座って少し待つだけ。すぐに名前が呼ばれ、新札と交換してもらえた。手数料は、無料。日本銀行内にいたのは、ものの10分~15分だろうか。あっけなかったが、妙な達成感があった。

最後に、窓口の女性に聞いてみた。

私:「普通の銀行でも、破損紙幣を交換してくれるのですか?」

銀行員:「それは可能です。ただ、鑑定のために、こちら(日銀)に戻す必要があるので、私共のところにお越し頂くよりは、交換に少し時間がかかる場合もあります」
へぇ~、なるほど! 一度、「破損紙幣の交換」という経験値を積んだ私は、すっかり強い。今後は、引き出しの中に放置しているより、サクっと近所の銀行に持って行った方が現実的かな? と思った。(執筆者:楢戸 ひかる)

※日本銀行では損傷現金の引換えを行っているが、「引換対象」、「引換基準」といった、規定がある。

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