正月の相続問題〜実家の墓や仏壇は本来誰が相続すべきか?

 年末年始の帰省にあたっては親族が集まるため、相続問題について話し合われる方々も多いことでしょう。相続財産について誰が受け継ぐかを考える時、お金や不動産、株式はもちろんのこと、お墓や仏壇を誰が受け継ぐかも問題となります。お墓や仏壇の祭祀継承者は一体どのように決めれば良いのか?ご説明いたします。

年末年始の「相続」話し合いが「争続」になる時


 年末年始はご実家に帰省される方も多いことでしょう。

 相続税法が2015年に変わりまして、いわゆる富裕層と呼ばれる人達だけではなく、中間所得層においても実質的な増税となったのは、記憶にあたらしいところです。

 これもあってか、「相続」が「争続」と化している事例をよくお見かけ致します。

 争続の中身は、何もお金だけではありません。それ以外にお墓を巡る争続も起こります。

 そこで本日は、「実家の墓や仏壇は、本来のところ誰が相続するのか?」というテーマでお送りしましょう。

お墓や仏壇は法律上は相続財産にあたらない


 結論から言うと、お墓や仏壇などは祭祀(さいし)財産と言いまして、誰が相続?という意味では、法律(民法)上は相続財産ではないのです。

 相続人が複数おられる場合でも、原則として1人が祭祀財産を受け継ぐことになっているんです。

 この場合は「相続する」のではなく「受け継ぐ」という考え方をしまして、受け継ぐ人は「祭祀継承者」と言われます。

 祭祀継承者の決め方は、

1.亡くなられた方の指名があったときは指名された方


 遺言書に書かれている場合や、生前口頭で指名されている場合などですね。

2.この指名がない場合には、慣習を優先させます。


 ご一族のこれまでの慣習や、祭祀財産がある地域の慣習などですね。

3.上記の1、2に当てはまらない場合


 慣習では決めにくいときには、相続人間の話し合いも良いでしょう。

 遺産分割協議に当たって、祭祀継承者には今後経済的な負担を掛けることが理解されれば、遺産の中から幾らかを将来の費用として優先的に割り当てることも行なわれます。

 もちろん、原則に立ち返り、葬祭の際は皆が平等に費用を負担することでも良いと思います。

 最後の方法は、家庭裁判所の調停または審判で決めていただくことになります。

お金という物差しのみで測れないのが相続問題


 いかがだったでしょうか?

 お墓や仏壇などが相続財産でないという事実、意外と知らなかった方も多いのではないでしょうか?

 誰が受け継ぐにせよ、供養をきちんと行ってくれる人がお墓を受け継ぐことで、ご先祖様も喜ばれることでしょう。

 お金という物差しだけでは測れない相続問題があることも、正月に親族で集まる時は話し合えると良いですね。(執筆者:行政書士 泉つかさ法務事務所)

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