糸井重里の「ほぼ日」が上場。メディアが語らぬもう1つの理由

 糸井重里さんが社長を務める「株式会社ほぼ日」が3月16日に上場しました。報道の論調は上場の目的が、糸井氏頼みの「個人事務所」から、普通の会社になること、というものが主流です。たしかにこれも上場の理由かもしれませんが、おそらく今回の上場には、報道されないもう1つの狙いがあると思われます。それは相続対策です。

糸井重里の「ほぼ日」が上場。経過も上々。


 糸井重里氏(糸井氏)が社長を務める「株式会社ほぼ日」が3月16日に上場し、公開価格2350円に対して上場初日は値付かず、翌日に5,360円の初値を付けました。

 注目案件につき、資金が集中したこともありますが、上場はまずまずの成功と言えるでしょう。

 ほぼ日は、カリスマコピーライターである糸井氏が開発した、ほぼ日手帳を始めとするヒット商品の販売好調に支えられ、急成長こそないものの、営業利益率などを見ても、業績は安定しています。
 
 同時にほぼ日がなぜ上場したのか?その理由については、様々な報道がなされていますが、主流の論調は、脱「個人事務所」を狙うこと、とされています。

 成長も目指さないし、株主との対話を重視し、糸井氏の個人事務所から普通の会社になると報道されています。

 確かに、これも上場の理由の1つでしょう。

「ほぼ日」の上場に込められたもう1つの狙い


 しかし、あまり報道では触れられていませんが、ほぼ日の上場には、おそらくもう1つの狙いがあると思われます。

 それは、相続対策です。

 20〜30年前は、相続対策の上場はもっともっとたくさんありました。

 業績のよい会社を作ってしまった場合、その株価は高く評価され、それに対して相続税がかかります。

 しかし、その相続税を払えるだけのキャッシュがない、ということはよくあることです。

 従って、上場し、いつでも創業者の株を売却できるようにするのは、相続税対策として非常に重要なことでした。

 上場前の株式保有比率を見ても、糸井氏が35.78%の株式を保有しており、この理由が容易に想像できます。

相続対策としての上場は当たり前の行為である


 近年はM&Aで売却することにより、非上場株を現金化しやすくなったので、相続対策目的の上場はグッと減りました。

 ほぼ日は、糸井氏が抜けると大きな痛手となるでしょうし、糸井氏が抜けた後を考えると、欲しがる買い手は少ないと思われます。

 従って、上場しておくことで、チャンスがあれば買収してくれる先を探す準備をすると共に、この段階で糸井氏に万が一のことがあっても、相続税の支払いに心配がない状況にしておいたものだと思われます。

 それほど特殊ではなく、過去には極めてよくあるタイプの上場であると見ています。

Photo credit: masato_photo via Visualhunt / CC BY-SA(執筆者:大原達朗)

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