「対面型営業パーソン受難の時代」に営業担当者は何を磨くべきか

 1990年代以降「あらゆるものがネットで売れるオンライン時代」が到来したことで、セルフサービス型の購買行動が主流となりつつあります。ゆえに対面販売は一歩間違えると消費者の購買意欲を減退させる行為となりがちです。この「対面型営業パーソン受難の時代」にあって、対面型の営業担当者が磨くべきものとは何なのでしょうか?

あらゆるものがネットで売れるオンライン時代


 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 インターネットが商用解禁されたのは米国では1990年、日本では1993年のことでした。以来、利用料金の低廉化により、インターネット常時接続サービスの普及が進みました。

 さらに、24時間携帯できる高機能なインターネット端末でもあるスマートフォンの登場により、インターネットは日々の生活に欠かせないものとなっています。

 とりわけ近年のECサイトの成長は目覚ましいものがありますね。「ネットで売れないものはない」と断言できるほど、ありとあらゆるものがオンラインで売れています。

オンラインの台頭=対面型営業担当者には受難


 さて、ECサイトを利用して、商品を探し、比較検討してショッピングカートに入れ、決済ボタンを押すプロセスは、購入者自ら操作する「セルフサービス型の購買行動」です。すなわち、リアル店舗での対面販売と異なり、基本的に販売員との会話はなく、一人黙々と、PC、あるいはスマホの画面を見ながら、商品を購入することが可能です。

 このセルフサービス型の購買行動は、日本全国、至るところにあるコンビニエンスストアのようなリアル店舗でも同じです。コンビニでは、タバコ購入や公共料金の支払い等でもない限り、店員さんとは会話することなく商品購入を行うことができますからね。

 こうして、現代に生きる私たちは、セルフサービス型購買にすっかり慣れてしまい、販売員さんは必ずしもいなくてもよい存在になりつつあります。

 というのも、多くのリアル店舗では従来、店員さんにあれこれ尋ねながら商品選択を行うしかなかったのが、現在は商品選択に必要な情報はインターネット検索で簡単に、大量に見つかりますので、わざわざ販売員さんに相談する必要性が低下したからです。

 したがって、普段からセルフサービス型購買を行っている私たちにとって、リアル店舗の店員さんが、売る気満々であれこれ話しかけてくるのは、正直「うざい」「やめてくれ」と感じることが多くなっています。

 このため、多くの業種業態において、「接客」することは販売促進をするどころか、むしろ来店客の購買意欲を減退させる行為になるリスクが高まっているのです。

どうしたらお客さんは「会いたい」「話したい」と思ってくれるのか?


 B2B系のユーザーの購買行動においても、クライアントが求める商品の詳細情報はネットを通じて大半が入手できるため、購買検討初期の段階では、営業担当者に連絡して情報提供を依頼する必要性が低下しました。

 むしろ、まだどの商品にするかも検討していない段階で、営業担当からしつこく自社商品を売り込まれるのは面倒ですから、多くの見込客は、営業担当に連絡するタイミングをできるだけ後ろにずらすようになっているのです。

 こうした販売員・営業担当者受難の時代、お客さんに「会いたい」「話したい」と思ってもらえるセールスパーソンになるためにはどうしたらいいのでしょうか?

 私自身が「こうすべきである」と確信を持って言えることはないのですが、様々な業界のトップセールスの方の話を見たり聞いたりしていると、大きくは2つの方向性があるように思います。

 ひとつは、その道のプロとしての知識を活かした最適な提案ができることです。どんな業界でも比較検討すべき商品は山ほどあり、素人のお客様にはどんな基準でどの商品を選ぶべきかがとても難しくなっています。

 そこで、様々な選択肢の中から、一人ひとりのお客様のニーズや嗜好(しこう)、適性なども踏まえて最適な商品を推奨すること、しかも、その推奨はお客様自身だけで検討していたら決して選ばないようなものであれば、お客様にとっては相談する価値のある相手ということになりますね。

 もうひとつは、個人として話して楽しかったり、癒されたりする存在になること。これは、お客様との相性もありますが、自分がべらべらと話すのではなく、お客さまに関心を持ち、お客さまがどんどん話したくなるような会話力を高めたり、話題の引き出しを増やしておくといった努力である程度解決できます。

Personality matters. 「人間性」を磨くことが対面型営業担当者にとって究極の活路


 ある業界のトップセールスの方は、その方がプレゼンに参加すれば百発百中で受注できるという凄腕の持ち主。経費精算などはまったく締め切りを守れず、勤務態度としてはだらしないところが多いのですが、とにかく話題豊富で、どんな人とも話を合わせることができるのが強みとなっているそうです。

 また、最近、製薬会社のMRのお話を聞いて、「なるほど」と思ったことがあります。MRはわかりやすくいうと病院や調剤薬局などに自社医薬品を採用を働きかける営業担当者です。医薬品についてもネットで豊富な情報が入手できるようになった今、お医者さんとしては、忙しい毎日、MRのために時間を取る理由がほとんどなくなっています。実際、「以前よりもお医者さんが会ってくれなくなった。」と嘆いているMRが増えているのだそうです。

 そんな状況でもお医者さんとの関係性を確立し維持できるMRとは、単なる情報提供だけでなく、お医者さんの立場を理解して、同僚などには言えない悩み事なども親身に聞いて共感してくれたり、会うとホッとする、といった存在そのものが癒しになるようなキャラクターなのだそうです。

 こういう話を聞くといつも思い出すのが、「これからの営業において重要なこととは何か?」を端的に示す以下の言葉です。

  Personality matters. 人間性が重要。

 リアル店舗や、リアルな営業折衝では人と人との生々しいコミュニケーションが繰り広げられるわけですから、セールスパーソンはなにより「人間性」を磨く必要がありそうです。

Photo via Visual Hunt(執筆者:松尾 順)

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