女性が知りたいのはメリット、男性が知りたいのはスペック。男女差による購買心理の違い

 消費者の購買行動を理解するうえで、男性と女性の違い、つまり「性差」について知ることは重要です。たとえば、商品やサービスを提案される際に、女性が知りたいのはメリットで、男性が知りたいのはスペックだったりします。どのように性差でアプローチしたら良いか、参考までに本稿では、男性の「スペック知りたい欲」に訴求する新たなマーケティングサービス「drip」をご紹介します。

消費者の購買行動を理解するうえで知っておきたい「性差」


 こんにちは。ジェネシスコミュニケーションの松尾です。

 消費者の購買行動を理解するうえで知っておきたいことの一つが、男性と女性の違い、すなわち「性差」です。

 男性、女性と単純に分けて比較していいのか、と感じる方もいらっしゃるでしょう。もちろん、個人差も大きいため、「男性はこうだ」、しかし「女性はこうだ」と硬直的に考えることは避けなければなりません。

 それでも、大きな傾向としての男女差があることを、私たちは日々の生活の中でも感じることができますし、そうした男女による違いの傾向を理解しておくとマーケティング施策を考える際に大変役立ちます。

女性が知りたいのはメリット、男性が知りたいのはスペック


 では、購買行動における男女差についてひとつご紹介しましょう。

 女性の場合、ある製品・サービスが提示されたとき、そのスペックや内容よりも気になることは「自分にとってどんなうれしいこと=メリットがあるのか」ということです。

 よくある場面なのですが、こんな具合です。

男性のセールス担当が女性客に一所懸命、製品の機能や性能を語るのだけど、女性客はちょっとしらっとした感じで聞いている。

セールス担当が話し終わると、女性は「それで・・・」と聞く。

女性が「それで、私にとってのうれしいことは何?」と言葉にし、男性は女性の本音を知ると、「えっ・・・」と返す言葉に詰まってしまう。
 女性客が一番知りたい「メリット」を後回ししたためにセールスがうまくいかないという状況です。

 一方、男性は、製品・サービスのメリットもさることながら、その仕組みやメカニズム、また機能、性能などのスペックにも大いに興味を持ちます。メリットが享受できれば、仕組みがどうなっているかはあまり重要ではないはずですが、男性はそこも知りたいからです。

 前述した男性セールス担当が、自分が興味があるからと機能・性能を女性客に熱く語ってしまって、ちょっと引かれてしまう悲劇が起きるのは、こうした男性と女性の関心対象の違いがあるからです。

男性の「スペック知りたい欲」に訴求する新たなマーケティングサービス「drip」


 さて、最近、マーケティング業界でいう「M1層」すなわち20代男性をメインターゲットとする、ブロガーマーケティングサービス「drip」が注目されています。

 これは、主に電化製品やデジタルデバイスなどの、いわゆる「ガジェット」の利用体験を著名なブロガーが「PR記事」化し、ブロガーが運営するオンラインメディアなどに掲載してくれるサービスです。

 同サービスは今春にβ版が開始されてから、わずか2か月で50社200件のPR記事を受注し、順調な滑りだしを見せていますが、自社製品をM1層にアピールしたいメーカーにとっては、なかなかなかった隙間のサービスと言えるようです。

 このサービスの仕組みをもう少し詳しく説明すると(男性は特に興味がわくと思いますが笑)、自らもガジェットオタクと呼べるようなブロガー(同サービスでは「バリスタ」と呼ぶ)が、メーカーから対象商品の提供を受けて利用してみて、その評価や感想について記事を執筆、自らのブログやメーカーのサイトなどに掲載するもの。

節約社長
「drip」ホームページ

 そして、この記事の内容は、ガジェットのスペックも細かく説明する内容となっているのがポイントです。

 こうして、この記事を読んだMI層は、対象商品に対する興味を大いにかきたてられ、また詳細スペックなどへの理解も促進し、購買意欲を高めてもらえる、というわけです。

 すなわち、本記事前半にご説明したように、製品の仕組み、メカニズム、スペックに対する「知りたい」欲求の強い男性の購買心理を踏まえたPR記事が出来上がります。

 この点が、メーカーに歓迎されているのです。

 考えてみれば、昔から「モノマガジン」や「特選街」など、製品のスペックを滔々と語るような男性雑誌が存在しており、これらのWebサイトも一定のアクセスを集めています。

 一方で、紙雑誌の販売部数が低下し、広告媒体としての影響力が低下しているなか、ブロガーの影響力をてこに、若年男性層の物欲を刺激する「drip」のようなサービスには、今後一定の需要が生じると思われます。(執筆者:松尾 順)

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