マクドナルドの創業者レイ・クロックに学ぶ「人に依存せず再現性のある事業の作り方」

 中小企業の殆どは労働集約型で人に依存した事業を運営しており、利益もさほど出せていないのが現実です。マクドナルド兄弟は労働集約型のレストランを分業型に変え繁盛店を作ることには成功しましたが、2号店以降の出店で成功を収められていませんでした。そこに飛び込んだのがレイ・クロック。彼はどのように経営革新を実行し、マクドナルドの全米チェーン化を実現したのでしょうか?

マクドナルドを全米チェーンに押し上げたビジネスマン〜レイ・クロック


 今日は、「マクドナルド方式の経営革新」というテーマでお話したいと思います。

 マクドナルドを全米チェーンに押し上げたレイ・クロックさんというビジネスマンの物語が、今年の7月に映画化されました。

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 元々は、マクドナルド兄弟が繁盛店を作ったんですが、繁盛店をつくったマクドナルド兄弟でさえも実はチェーン展開には失敗しているんです。

 なぜマクドナルド兄弟は上手くいかなかったのか?

 なぜレイ・クロックさんというビジネスマンが一気に全米中にマクドナルドを広めることができたのか?

 これを知ると、事業を飛躍的に伸ばせず、悶々とした思いを抱いている方にとっては勉強になると思います。

中小の殆どが利益を出せない理由は「人に頼りすぎ」これに尽きる


 よく我々も経営革新をするときに、「マクドナルド方式でやってみようか!」みたいな形で、レイ・クロックのやったことを参考にしております。

 というのも、多くの中小企業が本当に利益を出すことに困っております。

 日本一のホワイト企業・未来工業の故・山田社長がおっしゃる言葉を借りれば、「たかが4000万円ぽっちの利益もなぜ出せないんだ?」っていうくらい皆儲かってません。

 日本で税金を収めている260万社のうち、利益4000万円以上出せている会社は僅か8万社しかないんです。

 ところが、これを殆どの方がご存じないんですね。

 「え!ちょっと待てよ…うちの会社なんて到底利益4000万円なんか…、出せないっ出せないっ。来年も再来年の計画も、どこを どう計算しても4000万円なんていかないよ(汗)世の中に8万社もそんなに利益を出している会社があったのか!」という感じで、これを初めて知ってショックを受ける方も多いんですよ。

 利益4000万円を出すには、1日10万円の利益をあげても3650万円ですから足りないんですね。

 ですから1日10万円以上の利益をあげていかないといけない。

 そうやってリアルに計算してみると、どう考えたって自分の会社の今のやり方でそんなに利益が上がるわけがない!っていうことろに皆さんの結論が行き着いてしまうんです。

 なぜなら殆どの中小企業がなんやかんやと人に頼っています。

 職人技みたいなものが必要であったり、どうしても手が足りない!手が足りない!手が足りない∞… って労働集約型の作業ばっかりやってるんです。

 なんやかんやと、これも人で、あれも人で、それも人で…という感じで商売を組み立ててしまって、そんなんじゃ全く儲かるわけがないっ!って話なんですよ。

マクドナルド兄弟の失敗は「業務に100パーセントの再現性を持たせなかったこと」


 実はマクドナルドの最初の成功は職人技を無くすところから始まっています。マクドナルド兄弟が、「職人要らないよ」って感じでやったら1号店が成功したんです。

 労働集約型だったレストランを効率的にやろうぜ〜って感じで、要するに従業員に分業させちゃうんです。

 従業員に分業させて、ハンバーガーもあっという間の30秒で作ってしまうような事を、マクドナルド兄弟が考えました。

 そうやって業務の仕組み化を考えて繁盛店を作ったにも関わらず、なぜかチェーン展開には失敗するんですね。

 その理由は、業務に100パーセントの再現性を持たせなかったことにありました。

 ちょっと腕の良い職人さんがもっと美味しいハンバーガーを作ろうと考えたり、もっとメニューを増やそうと考えると、それを「OK」という形で店に任せてしまったんですよ。

 だから、他で新規出店して色んなことをあれこれやっても、第1号店であるマクドナルド兄弟のハンバーガー店のような繁盛店は到底現れない、という話なんですね。

多店舗展開に慣れている人は1号店の再現性にこだわる


 これは多店舗展開に慣れている社長がやる方式なんですが、まずは1号店で完全に再現性のあるマニュアルを作ります。

 そして、その後2号店3号店を一気に出します。2店舗を一気にね。

 1号店での再現性を確実にするために、2つをいっぺんに出します。

 1号店の後の2号店、その後に3号店…という考え方では無いんです。

 大抵、2号店っていうのは失敗するっていうふうに言われているんですね。

 だったら失敗することを前提に、2店舗一気に出してしまおうと。

 それくらいのことをやらない限りは、1号店⇒2号店⇒3号店 みたいな出し方をしていたんじゃあ、確実に失敗すると。

 だからこの1号店での再現性を持たせるのが、どんなに大事なのかっていう話ですね。

 そして店長にも頼らない!

 店長の能力に頼らないような経営をやっていく、という形で仕組みを作っていくわけでございます。

レイ・クロックは売れるものに注力し「減らす改革」で再現性を成し遂げた


 改革をするときに簡単に出てしまうのが、その改革というのは、商品やサービスのメニューとか品揃えとかを増やすのか、それとも減らしていくのかっていう話。

 マクドナルドは減らす方でやりました。

 というのも、職人として売りたかったバーベキューステーキみたいなものがとにかく売れないんですね(笑)。

 ハンバーガーしか売れないから、「しょうがない!うちはもうハンバーガーのテイクアウト店に特化するんだ!」っていう形で、「減らす改革」をやっていくんです。

 皆さんの会社の経営改革にも参考にして欲しいのは、どうしてもね、人間はサービスとか品揃えを増やそう増やそうとしてしまうんですよ。

 これは本当に人間の性(さが)でしてね、「こういうのがあったらお客様は喜ぶ!こういうのもあったらお客様は喜ぶのに!」っていう感じで、大して売れないものも商品ラインナップに揃えてしまうっていう傾向があるんです。

 マクドナルド兄弟がやったこと、それからマクドナルド兄弟がチェーン展開に失敗し、実際にはレイ・クロックさんという方が成功するんですが、再現性をどう持たせるかっていうことで皆さんが本当に困っています。

 「再現性を持たせられたら、うちはきっと利益4000万円くらい出せるはずだ!」っていうことで、皆めちゃくちゃ戦っています。

 今年2017年に映画化もされたレイ・クロックの「マクドナルド改革」を皆さんも参考にしてみてはいかがでしょうか。


 
(執筆者:タナカキミアキ)

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