サブリース商法はお仕舞い!中古のRC(鉄筋コンクリート)持ちはご注意を

 サブリースを投資家に組ませて、シェアハウスに投資するよう呼びかけていた、「かぼちゃの馬車」ことスマートデイズ社が立ち行かなくなり、融資を組んだスルガ銀行もこれに対応し、巨額の貸し倒れ引当金を積み立てる事態になりました。これから、これら物件の二束三文売りが始まることになり、特に地方でRC(鉄筋コンクリート)物件を持っている人は、その余波に気をつける必要があります。

30年サブリース問題「かぼちゃの馬車」で炎上


 昨今、30年サブリースというのが問題になっています。

 賃貸用のアパートやマンションに家賃保証を付けるという名目で、土地持ちの方の土地の上にアパート・マンションを建てたりとか、あるいは不動産会社が新しく土地・建物がセットになったものを買わせたりとか…

 これには色々問題がありまして、去年はレオパレス問題があったりとか、今年はかぼちゃの馬車問題がちょっと大きくなりましたよね。

 今までもサブリースの金額を下げていくっていうのはあったんですけれども、今年問題になった「かぼちゃの馬車」はチョット凄くて、賃料を大家さんに「支払わない!」って。

 そうしたら、大家さんだって借金してそのシェアハウスを買っているわけですから、家賃収入がないと返済ができないわけです。

 だもんで、しょうがないから、被害者の会を結成して「私たちは銀行にお金を返済しません!」みたいな(笑)。

 でも、私にしてみたら、「これ本気でこの人達言ってるのかよ!」みたいな感じでね。

 どこまで貸し手責任っていうものを考えているのかなって。世の中の「貸し手責任」ってのを過大解釈していないかなって思いましてね。

「かぼちゃの馬車」物件投資者に足りない「業」の自覚


 私も、その被害にあわれた方が80歳や90歳のおばあちゃんだったら話が分かるんです。

 80や90になる、まともな判断ができない状態のおばあちゃんにお金を貸したっていうんだったら、「貸し手責任はあるよね」ってなりますけどね。

 だって、今回のかぼちゃの馬車の件で引っかかった人たちは、いわゆる属性の良い人たちなんですよ。

 30代・40代・50代のバリバリのビジネスマンたちが、不動産を多く買わされているわけです。

 もともと、レオパレスにしても、かぼちゃの馬車にしても、投資したら、そこからはもう、不動産賃貸業、「業(なりわい)」を始めたわけです。

 この「業」を始めるんだっていうのが、「騙されたっ!」と言っている人たちの頭にはそもそもないんですよ。

 いざ、「業」をやるっていうことは、本当にね〜周りは良い人ばっかりじゃないんですよ。

 そりゃあ、もう〜どうにかしてカネを絞り取ってやろう騙してやろうって、踏み倒してやろうって、そういう人たちがある一定数いるのが、「業」の世界なんですよ。

 税法上も10室以上の部屋を賃貸すると「業」になります。不動産賃貸”業”です。

 ですから、ここの意識が全然無かったんだな〜と。ちと残念です。

相続”税”対策でアプローチかける業者の口車に乗るな


 それから、これはよくある話なんですが、土地を持っている人たちに対しては、建設会社や不動産屋さんが色々なアプローチをかけてきます。

 主にハウスメーカーが多いんですけれど、その時には必ず「相続税対策」の話をしてくるんですよ。

 っていうのも、やはり土地持ちさんはどうしても自分が相続起こった場合に、相続税は現金納付が原則ですから、そうすると現金が無いんじゃないか。

 そうなると、「相続税を払えなくて、土地を売らなければいけないんじゃないか」と不安になるんですね。

 ですから、会計事務所も「相続税対策」と「相続対策」をやってますから、土地持ちさんが相談にお見えになります。

 相続対策で1番大事なのは何かと言うと、あくまで相続税対策をやる時に地主さんとかだったら、絶対に賃貸のアパート・マンション以外の相続税対策はまずやらないんですよ。

 ですから、賃貸料がちゃんと入ってくるのか、その場所が賃貸物件に合っているのかどうか、そして次の世代がちゃんと経営をしていけるのかどうか。

 これが相続対策で1番大事なんです。

 それから分けやすくしておく必要もあります。

 相続人が何人もいる場合は、事業が絶対に解体しないようにちゃんと分けておく。

 そういうこともちゃんとやるんですけれども、やっぱりね”建てたいだけの人”は相続”税”対策だけで攻めてきます。

 この口車に乗っちゃダメです。

レオパレスはなんとなかっても、かぼちゃの馬車はお手上げ


 レオパレスだけじゃなくて大手のハウスメーカーも、賃貸用のアパート・マンションを建てる時には、土地持ち以外相手にしないんです。

 今回は土地持ちじゃない人たちっていうのが、かぼちゃの馬車みたいなのに狙われたわけですけれども、彼らは土地とかは持っていないんだけれども「属性の良い人」です。

 「属性」っていうのはこれ不動産用語で「融資がおりやすい人」っていうことです。

 融資がおりやすい人って誰かっていったら、ちょっと大きめの会社に勤めているサラリーマンの方、それから公務員の方、勤務医の方。女性でしたら看護師さんなんかもかなり狙われます。

 そういう形で属性の良い人にローンを組ませようっていう業界なんですよ。

 土地持ちの人は上もの建てるだけなんで、土地がある分まだそんなに被害は大きくないし、レオパレス事件って言われていますけれど、レオパレスって財務体質が結構バツグンで、現金預金を1千億近く持っているんですよ。

 借金も5百億円くらいしかないですから、破綻するっていうことは全然ないですね。

 ところがレオパレスっていうのは管理料が若干高いです。普通の物件の管理料っていうのは、大体家賃に対して5%くらいですが、レオパレスは10%くらいです。

 財務体質が良いわけで、潰れるっていうことはないので、それほど心配することはないです。

 でも、この属性の良い人に貸したかぼちゃの馬車のスマートデイズっていう会社はフラフラした会社なんですよ(笑)。

 ですから家賃をストップされたら、もうそれはバンザイするしかない。

銀行にも責めはあるが、それも想定してかかるべき


 それから、かぼちゃの馬車で狙われた人はみんな、融資を1億円くらい受けたと言われています。

 実際、スルガ銀行さんの調べでは、かぼちゃの馬車以外のシェアハウス含めても大体1200件以上に融資したと。

 おおよそ2千億円くらい融資して、それに伴った貸し倒れ引当金をガンガン連ねています。

 それから書類の改ざんがあるんだろうなって思うのは、販売会社です。

 販売会社が書類を改ざんしたんだろうなと思います。預金残高とそれから源泉徴収票ですね。

 これは銀行の融資体制として、行内でのチェック体制が甘かったんじゃないかなって、こう言わざるをえないですね。

 我々も源泉徴収票なんて絶対信じませんからね。

 ああいうのも納税証明書のその1その2っていうのを税務署で取るんですけど、それが無い限りは信じません。

 それから二重契約っていうのは、これ不動産業界では結構あるんですよ。

 あるんだから、こういうものは「あるもんだ」と疑ってかかって当たり前です。

 この二重契約って何かって言うと、頭金が無い人たちをどうやってローンを通すかっていう時に、書類の改ざんっていうのは源泉徴収票をいじって収入を高く見せたり、あとは預金通帳の残高を変えたりとか。

 二重契約っていうのは、契約書が2枚あって、高い方の契約書を銀行に出すことによって頭金…スルガ銀行だったら大体1割入れなきゃいけないけれど、普通の銀行だったら1割どころじゃないですよ

 普通の銀行から借りると、1.5〜2割の頭金入れないと融資してくれないです。

 スルガ銀行方式のスルガスキームっていうのは金利が高い分、頭金は1割でいいと。

 でも「頭金1割」っていっても、1億円の物件は1千万円ですよ。

 そんな大金持ってないよっていう人が世の中たくさんいるわけですよ。

 ですけれども、その人たちに買わせるために1千万円の預金を改ざんしたり、あるいは二重契約ってやつで、銀行に出す契約書をより高くして、より融資を引っ張った。

 その辺も疑いを持たれていますけれども、この二重契約に関してはそれほど珍しくもないなと。

 ただ、書類の改ざんについては今回はちょっとやり過ぎだし、それを簡単に見逃しているっていうのは、銀行内の融資のシステムをすぐにでも改善するべきです。

地方のRC(鉄筋コンクリート)持ちはご注意を


 あとは今回、融資をつけやすくするために、かぼちゃの馬車では「新築の木造」のシェアハウスっていうのが目をつけられたわけですね。

 新築木造でなおかつシェアハウス、そしてその後のビジネスモデルが入居者の女性の人材紹介による収入もあるっていう、スキームとしてはよく出来ているな〜という騙しの手口です。

 それもやっぱり”新築”だったから融資しやすかったんです。

 ところがこれで波及を及ぼすのは中古のRC(鉄筋コンクリート)です。

 主に地方の中古の鉄筋コンクリートも、どうもスルガ銀行もかなり融資していたようで、5月の時点の貸し倒れ引当金が6月の時点で、かぼちゃの馬車は50億円くらい貸し倒れ引当金の積立がありました。

 要するにリスケジュールで銀行との個別の話し合いで、金利の減免であったり、支払いを延ばして行くっていうのが、だいぶ進んでいるみたいです。

 ところが、この中古のRCの方も大きいわけですよ。

 さらに150億円くらいが1ヶ月足らずで積み増しがあって、つまり、ここにも波及が来ている。

 これね、スルガ銀行だけの話じゃないんですよ。地方の銀行も中古のRCに対してかなり貸し込んでいるんです。

 というのも、この中古の鉄筋コンクリートっていうのは、「積算」っていう計算方法があって、貸しやすいんです。

 だから、実際にそういう価値がなくても、その金額を貸せちゃうっていうのがあって。

 こんな具合に、中古RCにも波及が来ていて、スルガ銀行も貸し倒れ引当金を150億円くらい積み増したので、かぼちゃの馬車事件でスルガ銀行はどんどん前に進んでいるんですよ。

 あんなの訴えられようが訴えられまいが、金融庁の検査入って、そして委員会置いて、どんどん会社としては、貸し倒れ処理が進んで行ってます。

 そして、中古のRC価格が間違いなく下がる方向にいってしまいました。

 ですから、今、多分みなさんの思っている価格より2割下でも売れないかもしれませんね。

 それくらい、かぼちゃの馬車事件が起こった時に、先にサッサと売っときゃ良かった的な中古のRCもあるかもしれない、ということがこれから起きるよ。というお話でした。


 
(執筆者:タナカキミアキ)

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