消費税・増税時の景気は企業の内部留保課税を左右する

 企業収益が過去最高水準に達していると言われながら、国民所得の伸びは大きくありません。これに呼応するべく国会では国内企業で過去最高水準に達している内部留保への課税に対する議論が逼迫しています。実際にこれが本当に実施される可能性を意識しなければ行けない時期が来るとすれば、それはおそらく来年に迫った消費税増税後です。

企業の内部留保は過去最高水準に達する


 自民党の総裁選は安倍首相の3選となりましたが、石破元幹事長も予想以上に票数を獲得し、特に地方票での健闘が目立つ結果となりました。

 この理由の1つには、「アベノミクスの恩恵を地方ではあまり受けられていないためではないか?」とも言われています。

 企業業績は過去最高の水準ですが、それに比べると国民所得の伸びは大きくありません。

 統計上賃金が増えていると言われても、実感としてそれを感じにくい人が多いというのは以前からたびたび報じられているところです。

 その理由の一つとして、企業が収益を賃金アップや設備投資に回さず内部留保しているから、ということが国会等でも議論されています。

 企業側からすれば万が一のために少しでも内部留保を厚くしたいという指向がありますが、内部留保が多くなればその分経済が回らす景気が上がりにくいということにもなります。

 そこで企業から内部留保を吐き出させるために、内部留保に対して課税をしようという議論がかねてより上がっています。

内部留保課税が現実味を帯びるのは消費税増税時


 現行制度での内部留保に対する課税は同族の大企業に限定されており、その趣旨は株主へ配当金を支払わせることにあります。

 もし、上記のような理由から新たな内部留保金課税を導入しようとすれば、対象企業や計算方法もかなり変わるはずです。

 当然、大企業を中心に反対運動が起きるはずですが、もうけすぎ批判を真正面から受けてしまう可能性もあり、その場合はあまり声高に反対を叫べなくなってしまいます。

 もちろん、内部留保に対する課税は、内部留保自体が法人税等を課税された後に残っているものであるので、二重課税ではないかという冷静な指摘もあります。

 とはいえ、財源の問題や世論の風向き次第で議論の方向がどう変わるかは予断を許さないところです。

 まずは景気動向、特に来年に迫った消費税増税後の景気がどうなるかを注視する必要があるでしょう。

 これ如何によっては、内部留保課税に関する議論が現実味を帯びたものとなる可能性が一気に高まるため、利益の分配について各企業に大きな変化を及ぼす可能性があります。

【関連記事】