消費税増税前の住宅購入買い煽りで損するな!住宅購入のベストタイミングは?
いよいよ2019年10月に消費税増税が実施される運びとなりそうです。増税により一般市民の買い物で一番注目が集まるのが住宅です。増税前のタイミングは必ず駆け込み需要を狙った不動産業者による「増税前の住宅購入を!」という買い煽りが起こります。しかし、今回の消費税増税では住宅ローン控除制度の改正が検討されており、税負担の多少だけを見て住宅を購入すると損をする可能性があります。
人生最大の買い物「住宅」にも大きな影響が
2度に渡って延期されていた消費増税が、いよいよ2019年10月に実施されることになりそうです。
8%から10%。いままでと比較すると100円の買い物で2円、10万円で2,000円、100万円で20,000円の差が出ます。
オイルショックよろしくトイレットペーパーなど買いだめする方はあまりいないと思いますが、大物家電や車などを購入予定の方は、やはり増税前のタイミングに動く方も多いと思います。
2014年の増税のタイミングで「指輪が高くなる」と結婚を決めた知人がいました。一部このようなハッピーな事例もありますが、ほとんどの消費者にとって増税は負担でしかありません。同じものを買うなら、税率が低いうちにと考えるのは自然なことかもしれませんね。
さて一般の個人にとって、この増税の影響をもっとも大きく受ける買い物はなんでしょうか。そう、人生最大の買い物と言われる「住宅」です。
土地には消費税がかかりませんが、建物は課税対象です。一戸建てでもマンションでも、数100万円から数1,000万円という金額の買い物に消費税がかかるので、当然増税前と後では大きな差が出ます。
今までの増税前には、必ずと言ってよいほど「増税前のチャンス!」「〇%のうちに住宅購入を!」と煽る業者さんの広告が目につきましたが、今回も同じような現象は予想されます。
消費税増税で住宅購入費用にどのくらい差が出る?
消費税が8%の時期に、4,000万円(税抜)のマンションを購入するとします。
内2,000万円が土地代金だったとすると、建物は2,000万円。消費税は2,000万×8%で、160万円です。
これが消費税率が10%になると、2,000万×10%で200万円。その差は40万円となります。この額は物件価格が高額になればなるほど、差額も大きくなります。
大型テレビや家具、高級食器が買えるくらいの違いが出ますので、購入を急ぎたくなる気持ちも分かります。
以下のグラフでも分かるように、過去の増税前にも実際住宅着工戸数が伸び、増税後に落ちるという現象が見られました。
増税前の住宅購入に待った!増税後に得をする仕組がある!?
しかし今回の増税では、拙速に判断すると損してしまうかもしれません。つまり増税後の方が得をするかもしれないのです。いったいどういうことでしょうか。
その理由は「住宅ローン控除」。
簡単に言うと、住宅ローンの年末残高の1%を、その年の所得税から引く減税制度です。(引ききれなかった場合は住民税から減税)
ポイントは、配偶者控除や保険料控除のように「所得から引く」のではなく、ダイレクトに「税額から引く」というところです。
現段階では期間は10年間、最大で年間40万円(長期優良住宅は50万円)とされていますが、これが消費税率10%で物件を購入した人は13年に伸ばすことが税制改正大綱に盛り込まれました。
最大40万円×10年=400万円→最大40万円×13年=520万円となるので、控除額最大120万円の差が出ることになります。これは大きいです。消費税2%、数10万円の差もブッ飛ぶ差額です。
とはいえこれは最大値。
13年の間、年末の残高が4,000万円以上ということは、当初の借入額が6,000万円くらいないと、控除のメリットを最大限享受できないということになります(35年1%固定で試算)。かなりリッチな物件ですよね。
例えば当初3,000万円のローンだと、10年間260万円、13年間320万円の控除額となり、その差は60万円となります。
また、扶養控除などの関係で「そもそも所得税をあまり払っていない」という方なら、この控除の差はさらに狭まります。
試算して比較を!増税後のほうが負担を減らせる場合が!
つまり「消費税8%&控除10年」VS「消費税10%&控除13年」の試算をしてみないと、どちらが得かはわからない、ということになります。
前述の例だと、税率アップ前なら土地2,000万円、建物2,000万円の物件で消費税額40万円がトク。住宅ローンを3,000万円組んだ場合、税率アップ後のほうが、60万円がトク、という試算になります。
ただし、感覚としては、よほど大きな建物を建てない限りは、消費税の差より控除額の差のほうが大きい気がしています。つまり平均的なサラリーマンであれば、増税後のほうが負担を抑えられる可能性が高いです。
住宅購入は税額の損得ではなく必要か否かで決めよう
さて、今回は「制度」にのみ注目して書きましたが、もちろんマーケットの状況によっても増税前後の額は変わってきます。
根拠の有無はともかく「オリンピックの後は下がる」といううわさは相変わらず絶えませんし、また駆け込み需要後で売上が下がっているタイミングなら、値引き交渉もしやすいかもしれません。
いずれにしても、家だろうがトイレットペーパーだろうが、焦って購入して成功することはありません。煽り文句には踊らされず、これぞ!と思う物件に出会うまでは、購入を急ぐ必要はないでしょう。
※中古住宅については売主が個人であるケースがほとんどです。この場合そもそも消費税は非課税です(不動産仲介会社への手数料には消費税が課税されます)。(執筆者:赤井雅)