なぜ最低賃金しか払ってくれない経営者の下でこき使われるの?

 経営者の多くは「結果として」人をこき使っています。なぜならば、粗利益に対する労働分配率を知らないまま、国の決めた最低賃金をベースにして、考え無しに従業員たちの給料を決めてしまっているからです。しかし、これでは会社は更に儲からなくなります。なんとなく人の価値を決めている会社に、圧倒的な付加価値を作ることなどできないからです。「バカは騙されて最低賃金で人にコキ使われるの構図」が悲劇を生みます。

馬鹿は騙されて最低賃金で人にコキ使われる


 今日は本当に辛辣なテーマなのですが、「馬鹿は騙され最低賃金でコキ使われる」という話をしたいと思います。

 ここで言う”馬鹿”は、小泉政権下でB層とか言われた、要するに「皆に流されやすい人」とか、「自分で物事を考えない人」とか、そういう感じで捉えていただければいいんじゃないかと思います。

 有名なエピソードですけれども、小泉政権下は実際にB層戦略を活用し、選挙に勝つためにわかりやすく大衆を先導して、選挙に大勝ちしました。

 話を戻しましょう。最低賃金というのは実は決まっております。「地域別」とそれから「産業別」に最低賃金というのは決まっております。

 今日は「地域別」にお話ししようと思います。

 「985円」これが東京地区の最低賃金です。2018年の10月から1時間あたり985円が最低賃金です。

 東京も「産業別」に多少の差はありますけども、産業別で見ると985円を下回っている場合があります。

 地方ですと、ちょっと危険なところ…例えば製造業とかは、その地域毎の最低賃金より賃金が上回っていることもあります。

 東京を例にとりますと、2009年には最低賃金が時給ベースで791円だったのがどんどん上がってきて、2018年に985円となりました。

 地域格差によってかなり変わりますから、まぁ200円位低いところもあるんじゃないかと思います。

 東京地区985円が最低賃金で月給を換算しますと、1日の労働時間が8時間そして月の平均労働時間が168時間とすると、月額165,480円だけ払っていれば違法とならないという形です。

 よろしいですか?

 じゃあ、最低時給がどんどんどんどん変わっていく中で、「給与体系の見直しをあなたの会社はしましたか?」という調査に対する結果を見てみましょう。

 これは帝国データバンクの調べなので、中小企業でもかなり大きめの会社です。

 実際に「給料を見直した」ところは、2016年の調査では35%、2018年の調査では44%。それ以外が「見直していない」そして「わからない」になるわけですが、これよくよく見ると…なんかこれ「見直していない」とか「わからない」って、赤字企業割合にかなり近いよなって感じます。

 つまり赤字企業はやはり給与体系を見直したくない、つまり「給与上げたくないな」というのが見えてくると思うんですよ。

 東京の時給が高いのは、実は稼ぎ出す粗利益が高いから人件費を払えるんです。

 というのもこれは労働分配率という考え方なんですが、労働分配率は1人当たりの粗利益でほぼほぼ業種によってだいたい決まっています。

 設備投資が多くかかるような工場だと40%は払います。それからサービス業だと60%位は払います。

 それくらい人件費は払えるから、1人当たりの粗利益が大きければ当然のごとく高い人件費が払えます。

 東京のサービス業なんかは非常に忙しいですから、アルバイトといっても地方みたいにあまりお客さんが来ないという事はなく、お客さんはどんどん来るわけですよ。

 そしてどんどん売上も上がります。もちろん粗利益が上がります。ですから、あれくらいの人件費はもらって当然というような街なんです。

粗利益の労働分配率を知らない経営者は人をこき使う


 では、粗利益を大きくしてそして給料を上げよう!ということを社長さんとかに言われたことありますか?って話なんです。

 そういうことをきちんと指導されて「これだけの粗利益があれば、みんなの給料もこれぐらい上がるんだよ!」という話をされたことありますか?

 これ、実は中小企業ってほとんどないんですよ。

 というのも中小企業の経営者って、この労働分配率をどうすればいいかなんていうことをほとんど知らないんです。

 ほとんど知らないまま経営してるんですよ。なんとなく経営しているんです。

 そして、なんとなく経営するがゆえに、その県とかで決まっている最低時給で物事を考えるんです。

 だって、人件費をいくらにしていいか分からないから、そうだ!お国が決めている…県で決めた…皆で決めた…最低時給で考えよう!と。

 その”最低時給”のせめぎ合いが如何にセコイかというと、例えば自分の県より隣の県が1円2円高いだけで、このままではその1円2円で隣の県に人が取られるかもしれないって。

 だって、アタマが”最低時給”でしか考えられませんから、だから最低時給を隣の県に合わせてくれとかワケのわからん要求をするんです。

 だけども「全体的には下げておいてくれ!」って。。

 いったいどこで勝負をしているかなんです。

 世の中に価値を与えてこの粗利益を大きくしようなんて考えていないんですからね。

 そういうことを全く考えなくて、お国が決めているような最低時給で全部物事を考えて、そしてそんなふうに安くコキ使おうと思っているんです。

 そんな経営者のもとで皆さん働きますか?働かないですよ。

 だけど、皆さん世間知らずだから、そういう経営者の元で働いてしまうんです。

そろそろ安い人件費で人をこき使うの止めない?


 今、特に都市部なんですけれども、最低賃金を時間給で1500円とかもしくは2000円に上げちまおうぜっていう、こういうことを考えて準備をしている会社も沢山あります。

 かたや、東南アジアから安い移民を連れてきて、今40万人ぐらい連れてこようという話もあがっているわけです。

 移民を受け入れてコキ使おうぜって。

 世の中に価値を与えることができない、だけど自分がやっている事業を継続するには安い人件費で、誰かをこき使わなければいけない…。

 ヨシッ!いるじゃないか、移民が!移民を連れてこようぜ!って、こういうふうに分かれているわけですよ。

 じゃぁ、今はその安い移民を連れてこようっていう方が強いですが、最低賃金を上げる方がどうなるかと言うと、もし最低賃金を上げてしまったら、世の中に必要のない、価値を与えていない会社は潰れるだけで、実は社会的損失っていうのはほとんどないんです、本当は。

 だって、付加価値を作れない会社が潰れても、他に経営が上手い人たちがその市場を引き継げば良いだけですから。

 一時的に失業率は増えるかもしれませんけれど、要するにやり方がガラッと変わるから、長期的に見るとそのほうが経済が好循環を描くようになるんです。

 これは昔から経営学でも語り継がれる話なんですが、「フォード方式」っていうのがありまして、フォードさんは1900年代の頭に給料を倍にするわけですよ。

 なぜ倍にしたかと言うと、定着率を上げて、訓練費も下げて、なおかつ生産性を上げて、早く車を組み立てて(生産して)、世の中に出してあげたいという理由です。

 役員会はもちろん大反対ですよ。

 何を言っているんだ相場ってものがある、ここら辺では2ドル35セントでも出しすぎかもしれないのに!ってクソミソに反対します。

 だって2ドルを3ドルにするならまだしも、フォードは5ドル出すって言うわけですよ。そんな倍以上出せるわけがない。

 でも、フォードはそれでも押し切るわけです。「とにかくうちの会社は5ドル出すんだ」と。

 そうやって世の中をガラッと変えてみて、やっぱり給料っていうのは高くすると採用費も落ちる、訓練費も落ちる、そして生産性が上がる!ということを証明したんです。

 人手不足で行き詰まってくる中で、もしかしたらフォード方式みたいなのを日本の経営者も採用するタイミングが来ているなのでは?と思います。


 
(執筆者:タナカキミアキ)

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