石割 由紀人

ベンチャーキャピタル出身公認会計士

石割 由紀人/1970年8月18日生まれ。公認会計士・税理士/資本政策コンサルタント。
国際会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(監査・税務)にて監査、株式公開支援、税務業務に従事後、外資系通信ベンチャーのCFO、大手ベンチャーキャピタルでの投資実務、上場会社役員等の実務経験があります。
株式公開に関わる幅広く・リアルな実務経験を有する数少ない公認会計士です。
特に、ベンチャー企業のCFOとしての資金調達実務と、ベンチャーキャピタルでの投資実務の両方の経験を活かした資本政策立案については、特にご満足いただけると自負しております。
著書に「株式公開を成功に導く資本政策立案マニュアル(中央経済社)」、「ベンチャーキャピタルからの資金調達術 VCがお金を出したくなるビジネスプランのつくり方 (ぱる出版)」があります。

(1)監査法人におけるベンチャー企業支援
私は大学卒業後、プロフェッショナルとしての生き方を目指そうと公認会計士試験を取得し、 大手監査法人に入所しました。監査法人では、監査業務・株式公開支援業務に従事し、 ベンチャー企業を外側から支援する仕事をしていました。
元々、独立志向の強かった私は、監査の現場で主任を務めるころになると、 独立の道を模索するようになりましたが、監査の世界でしか生きていなかったため、 どうすれば、独立開業できるのかさっぱり分かりませんでした。 ただ、公認会計士が独立開業すると、税務の仕事は避けて通れないということは聞いていたため、 監査法人系列の税理士事務所に転籍したのです。
(2)税理士法人で国際税務の経験
税理士事務所では、主に、外資系企業の税務申告や税務関連のコンサルティングの経験を 積んでいたのですが、独立開業したいという思いは、日増しに強くなるばかりでした。 そこで、いきなり独立開業するのは時期尚早と思い、まずは、ベンチャー企業に飛び込んで、 様々な実務経験を通じて自分自身の起業能力を高めようと思ったのです。
(3)ベンチャー企業のCFOに転進
公認会計士専門の人材紹介会社から、有望なベンチャー企業2社の紹介を受けました。
1社は、再生医療技術を開発するバイオテクノロジーのベンチャー企業、もう1社は 携帯電話の音質の評価・測定・調整技術を開発する外資系ベンチャー企業でした。 その2社のいずれに転職するか、悩み、いろんな人達に相談した結果、 バイオベンチャーの再生医療技術はあまりに夢物語に思え、また携帯電話が急速に普及してきた 時期でもあったため、私は、結局、外資系通信ベンチャー企業(A社)へと転職したのです。 ちなみに、私が転職しなかったバイオベンチャーはメドジーンという会社で、 後にアンジェスMGという株式公開に成功したベンチャーでした。 アンジェスMGに転職していればキャピタルゲインを手にすることが出来たかもしれません(笑)。
A社への転職の決め手は、外国人社長が、かつて自分の手がけた会社を米国の 大手半導体メーカーに約20億円で売却した実績(エグジット経験)を持っていたこと、 社内に世界中からPhd(博士号)を持った技術者が集まっていたこと、 社長以外の経営陣にも、世界的にも著名なコンサルティング会社出身者が集まっていたこと、 国内最大手ベンチャーキャピタルからの資本を受け入れていたことでした。
A社においては、A社の高い技術開発力を評価してもらったこともあり、独系投資銀行と 大手海外電話会社からの資金調達にも成功しました。 しかしながら、A社は、私が入社後、1年程で資金繰りが悪化し、事業は立ち行かなくなりました。
事業がうまくいかなった理由は、様々あるのですが、以下の3点にまとめられると思います。
まず第一点は、バーンレート(投資先企業が毎月収益を上回って消費する金額)を コントロールできなかったこと。 売上が年間で1億円弱しかないにも係らず、毎月、5千万円もの経費を消費していたのです。 こういった状況では、ベンチャーキャピタルが追加増資に応じてくれている場合は、 何とか資金が回りますが、ベンチャーキャピタルからの資金が途絶えれば、 あっという間に資金ショートしてしまうのです。非常に危なっかしい財務体質であると言えます。
第二点に、開発が思ったほど順調に進まなかったことです。 主要製品の開発が十分でないまま、次から次へと手を広げたのですが、 どれも十分にはモノになりませんでした。 当時を振り返ると、ベンチャーキャピタルのマイルストーン投資という行動特性を考慮すると、 ゼロか百かの資本政策であったと言えます。
第三点が、販売チャネルを十分に開拓できなかったことです。 販売チャネル開拓のため、ターゲット顧客に近い、通信キャリア出身の研究者を 会社顧問として採用しましたが、思ったような効果は出せませんでした。 会社顧問や社外取締役として、大企業のOB等を採用するケースもあるかと思いますが、 本当にその人がターゲット企業に対してキーマンになるか見極めは慎重にする必要があるでしょう。
A社は結果として、株式公開を断念することになり、 私は自らのやるべきことを失った状態になってしまったのです。
(4)資本政策のノウハウを身に付けるためにベンチャーキャピタルに転進
そんな折に、ある上場ベンチャーキャピタルから、公認会計士としての経験、 ベンチャー企業でのCFOでの経験を活かし、投資実務に従事してみないかと誘われ、 ベンチャーキャピタルへ転進することにしました。
ベンチャーキャピタルに転進した理由は、第一に、ベンチャーキャピタルからの資金調達の 実務能力をアップさせるためには、ベンチャーキャピタルそのものに転進するのが一番と思ったこと、 第二に、ベンチャー企業の経営に積極的に関与し、経営支援をしたかったからです。
ベンチャー企業のCFO時代、結果として、大手ベンチャーキャピタル、海外大手通信キャリア、 外資系投資銀行等からの資金調達に成功はしましたが、資本政策の交渉で、 どうしても投資家側に主導権を握られていた状況でした。 その当時の私が、普通の公認会計士・税理士としてのスキルしか持ち合わせていなかったためです。 資本政策を立案する技術を身につけるには投資する側に、転進するしかないと思ったのです。
そのベンチャーキャピタルでは、M&A、MBO等を駆使したバイアウト投資等の プライベートエクイティ実務に従事しました。 投資先へのストックオプション導入も経験することが出来ました。
ベンチャーキャピタルで実際に働いたことで、ベンチャーキャピタルの立場からの 資金調達の仕組みが分かりましたし、投資契約書の交渉ポイントや資本政策のポイント もつかむことが出来ました。 ベンチャー企業の内側でCFOとして働いていても到底分からなかったことがたくさんありました。
(5)自ら独立開業し、起業家と同じ立ち位置でベンチャー企業を支援
ベンチャーキャピタルで様々な経験を積むことは出来ましたが、自分の本当の目的は、 起業家と同じ立ち位置でベンチャー企業を自らの手で支援することでした。
そこで、大手監査法人での監査経験、外資系税理士法人での税務経験、 ベンチャー企業CFOとしての経験、ベンチャーキャピタルでの投資経験を基に、 ベンチャー企業の株式公開支援に特化した公認会計士事務所を開設しました。
(6)現在
ベンチャー企業の会計税務顧問、上場会社の社外役員等に従事させていただいております。
株式公開を目指すベンチャー企業には逆風が吹き荒れていますが、このような時代だからこそ、 高い志を持つベンチャー企業を支援していきたいと思います。